☆「書」についての諸知識

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書に関するQ&A





初心者はどんな用具を買えばよいか?

 まず筆についてですが、2500円前後の筆は、初心者向けの汎用のものが多いようです。用具店の人に聞いてみるとすすめてくれるはずです。ちなみに、私の授業では、「海」(一休園)、「潮風」(玉川堂)をすすめています。ある程度かけるようになると、個性的な表現が可能な筆が欲しくなると思います。そのころになれば、こういう筆が欲しいというイメージができてくると思いますので、店の人にそのイメージを伝え教えてもらうと良いのではないでしょうか。うちでは、「暖心」(ほうこ堂)、「真冬宿浄三羊毫」(博文堂)などを使っていますが、これは書風によって違うので参考になりません。小筆については、あまり詳しくないので、省略です。

 つぎに硯ですが、気分的な問題をのぞけば、墨液を使う人は墨池でも良いのではないでしょうか。500円くらいです。どうせ硯を買うのなら、安い「端渓」(中国製、硯の王様、摩墨良好)を買ったらどうでしょう。3000円くらいから買えます。どうしても、安いものをという場合は、通称「羅紋」(中国製)といわれるもの、500円くらいがいいでしょう。「雨畑」などの日本製のものは割高になりますが、金額さえ出せば良いものが買えます。1万円以上のものはたいてい趣味の領域になりますが、そのうち欲しくなったら買えば良いのではないでしょうか。

 墨です。墨をする時間がなくて、書から遠ざかるくらいなら、墨液をつかって気楽に練習した方がよいと私は思います。墨液もピンからキリまでですが、高価なものは、私なぞが摺ったものより良い色がでたりします。さて、いちおう固形墨も買っておきましょうか。何丁型という言い方をしますが、中国製と日本製で単位がちがいます。小学校の書道セットに付いてくる墨より2まわりくらい大きめが良いでしょう。適当な大きさで、3000-5000円程度のものを買っておけば、間違いないと思います。銘柄は、用具店の人に聞いて下さい。

 紙は、用具店によって、その名前が違っていたりして統一性がありませんから、省略します。まあ、仮名用のにじみ止めがしてあるものなどを知らずに買ったりしなければ、問題ないと思います。





筆は全部おろした方が良いですか?


 基本的には全部おろして使った方が、表現の幅も広がりますし、長持ちするようです。墨を含む量も当然多くなります。しかし、すべての筆がその通りだとは限りません。おろしてはその筆の性能が発揮されないものもあります。仮名や細字につかう細筆は、普通はおろさない方が良いです。全部おろして良い筆かどうか、お店で聞いてみましょう。なお、筆をおろす時は、硯に押しつけていきなりおろさないように。折れてしまったり、変な癖がついたりします。水でのりを落とすようにしましょう。





用具の後始末はどうしたらよいか?


  全部おろして良い筆は、根本に墨が残らないように、丁寧に水で洗います。おろしてはいけない筆は、しめらせた紙などでふき取ると良いでしょう。

 硯に墨が残って腐ったりしないように、できるだけ水で洗い流しましょう。硯は、かなり摺ったなと思ったら、砥石(用具店に売っています)で研ぎましょう。そうしないとだんだんすれなくなります。





まず何から学習したらよいか?

 やはり、基本は臨書だと思うのですが、何を臨書したらよいでしょうね。

  ・楷書:九成宮醴泉銘・孔子廟堂碑
  ・行書:蘭亭序(集字聖教序)
  ・草書:書譜
  ・篆書:泰山刻石
  ・隷書:曹全碑

 あたりが、一般的です。しかし、これらは最も基本であると同時に、究極の姿であるといっても過言ではないでしょう。ですから、これらは始めるに当たり、臨書の参考例を見て学べば、取っつきにくいことはないと思います。また、一方、行書を例にとると趙子昂あたり、篆書だと清代ものを学ぶ方が良いという考え方もあります。

 これらをやっているうちに、楷書なら北魏のものとか、行書なら宋代のもの(蘇東坡・黄山谷・米フツ)など、やりたくなってきたら、そちらをすれば良いと思います。





手を汚す人は、下手な人でしょうか?

 はっきり言って、関係ないと思います。学校の先生にとって、あちこち汚されてはたまりません。だから、手も汚さない子の方が助かります。だから、そんな風に言われるようになったのではないでしょうか。このページを読むような大人のあなたは、自分の責任で汚れたら掃除すればよいのですら、大丈夫です。あんまり、つまらない迷信にとらわれずに、楽しくやりましょうよ!

 なお、墨で服などが汚れた場合ですが、書道用具店で売っている「墨落とし」がなんといっても、良く落ちるようです。ついでに買っておいたらどうでしょう。





英語の書道の本を紹介して下さい。

 私の知る限りでも、十数冊あります。日本で簡単に手に入るものとしては、

  1. Ryokushu Kuiseko: "BRUSH WRITING-Calligraphy Techneiques for Beginers-"/KODANSHA INTERNATIONAL,Tokyo
  2. Christopher J.Earnshaw: "SHO Japanese calligraphy-An In-depth Introduction to the Art of Writing Characters-"/Charles E.Turttle Company,Vermont&Tokyo
の二冊があげられます。
 1は、著者が書の先生であるようですが、私は知りません。書の歴史や用具などにも簡単に触れられていますが、ほとんど楷書・行書を中心としたお手本とその解説集です。それにたいして、2は日本の著名な書家が編集に関わっており、訳者は別と思われます。お手本ももちろんありますが、それは古典を下敷きにしています。また、表具・篆刻・刻字・拓本・表札といった周辺事項も含め、詳しい歴史や文房四宝、著名な書家のインタビュー集、用語解説も付いた総合的な本です。子供がちょっとやってみる程度でしたら1が良いかも知れませんが、高校生以上ならば知識的にも充実した2がお薦めです。なお、2は、Japanese calligraphyとなっていますが、漢字もかなも両方あります。お間違えなく。

 海外で出ている本もいくつか紹介しておきます。
  1. T.C.Lai: "Chinese Calligraphy Its Mystic Beauty"/Swindon book company,Hongkong
  2. ChiangYee:"Chinese Calligraphy -An Introduction to Its Aesthetic and Technique-"/Harverd University Press,London
  3. William Willetts:"Chinese Calligraphy -Its History and Aesthetic Motivation-"/Oxford University Press,Oxford
 1は、歴史順に書の図版が載っています。説明はあまりありません。モノクロなのが残念です。2は、漢字の歴史、書の歴史、造形論、練習法など総合的で文章を主としています。3は、ほぼ歴史に沿って図版が紹介されている形式です。カラーのページもあります。自分で書こうと思わない人には、3がお薦めです。





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