安定して線が引けない(2)

-硯の位置とひじの関係-

押木秀樹   


図1-硯の位置と肘の関係  毛筆の学習を始めたばかりの人で、線がふらふらするという人がいます。もちろん、書き慣れていない人は、どうしてもふらふらしてしまうでしょう。いわゆる正しい持ち方(持ち方については別項参照)で書き慣れることが大切です。その前にちょっと待って下さい。特に長袖の服を着ている倍、また小学校などで買った「お習字セット」を使っている場合、ちょっと注意してみて下さい。あなたが字を書いているとき、そでから肘に書けて、ちょっと見てみて欲しいのです。

 右の図の斜線のところに硯がありませんか? 子供の頃は、袖を汚してしまった経験があるかも知れません。しかし、大人になると、身体の各部の位置を無意識にチェックしているのでしょうか、袖を汚す人は少なくなります。そのかわり、次の図のように肘をあげることで硯を避けている人が多いのです。

 もちろんこのような書き方になれきっている人には、何の問題もないでしょう。また、別の文章で書いたとおり、このような構え方/姿勢を奨励しているところもあります。しかし、ごく自然な構え方をしている人にとって、このことは不安定になる原因になるのです。ちょっと、自分の肘の位置を確認してみて下さい。


図2-前の子供の肘を汚すから  もう一つ関連して気になることがあります。小学校の場合など、右の図のようにぎりぎりにおくと、今度は前の児童の肘に筆が当たってしまうという問題がおきます。これはある県の書写教育の研究会の資料から抜粋した写真です。この県は、大変書写指導において進んでいる県です。でも肘の位置に硯があります。皆さんも子供の頃、肘で後ろの子の筆を落としてしまい、自分は長袖シャツを黒くしたという経験がないでしょうか? だから、これを防ぐために、小学校の先生は前の図の斜線の位置に置くように指示しがちです。さて、あなたが小学校の先生ならどう指導しますか? 肘を上げさせる? それとも、前の子の肘が当たっても気にしない??


図3-ちょっとした工夫  小学校用の習字セットにもいろいろな工夫が凝らされたものがあります。右の写真の上のものは、どうしても肘があがってしまう位置に硯が来てしまいます。それに比べて下のものはその心配がありませんね。もし、上のような場合でも、すり減った消しゴムなどを、筆の下の方に挟むなどすれば対応できますから、どうぞご安心下さい。ちなみに、上の白黒写真の学校でも、こういった工夫をしていますよね!

 まとめとして、私たち自身、また子供たちには特に、練習しやすい状況で練習させてあげたいと思うわけです。机が狭いということも問題ですし、硯箱の形も問題かも知れませんが、工夫することで何とか乗り切っていきたいものです。

(1997.06.01)
参考:
「肘の状態と硯の位置等について-毛筆で横画が安定して引けない子供のチェック事項を考える-」(『石川県書写書道教育』研究集録1997)



<========================= 選択のページに戻る ========================>

<========================= 押木研究室に戻る ========================>