書に関する入門書と情報源

 書に関する書籍は、少なからずあります。書の勉強を始めようとしたとき、どの本がよいのか迷います。そんな人のために、参考になったらと思います。どれが良いということではありませんが、学生らにすすめて、比較的評判が良かったものをあげておきます。



情報源

数種類の新聞が発行されています。それぞれに得意な分野があるようですが、書塾協の機関誌であったり、書学書道史学会など学術的分野まで幅広く取材しているという点では、「書道美術新聞」(美術新聞社あたりが一般的かも知れません。
展覧会情報やその報告などについては、上記の新聞や下記の雑誌などにも掲載されていますが、専門のものとして「書道ジャーナル」などもあります。

雑 誌

数種類の雑誌が発行されています。各書道団体が発行している競書雑誌などは、のぞきます。さて、雑誌にもそれぞれに得意な分野があるようですが、比較的幅広いテーマを扱っているものとして、『墨』(芸術新聞社あたりが一般的かと思います。特集・書家や作品の紹介・書論や書道史・トピックス・展覧会情報など、内容の濃い隔月刊の雑誌です。かつては、特集としてかなり深い内容が掲載されていましたが、最近は「墨スペシャル」「墨増刊号」などで対応しているようです。

概 論

  1. 墨増刊号『書道入門』/芸術新聞社
  2. 書の基本資料9『漢字の書の美 中国編』/中教出版
  3. 上田桑鳩著『書道鑑賞入門』/創元社
この分野は、あまりに多くてどれを選んだらよいかわかりません。1は百科辞典的で1冊あると便利でしょう。とりあえず、書を見てみたいとい人は2が、500円以下で買えます。書は書かなくてもよい、鑑賞したい という人には、書道史の3・4と上の3などがお薦めです。

実 技

  1. 今井凌雪『今井凌雪の書道入門』/講談社
  2. 村上翠亭『かな書道入門』
  3. 上條信山『上條信山 書法基本帖』/木耳社
この分野もあまりに多くてどれを選んだらよいかわかりません。一般的で分かりやすいという点で1・2を挙げておきます。3は、少々個性的かも知れませんが、私の師匠なのであげておきます。この3者とも、東京教育大学・筑波大学の書道の教授をされた方です。(私は筑波大学の卒業ではありませんが)

臨 書

  1. 大東大書道文化センター『書道の古典』/二玄社
  2. 墨増刊『古典の上手な学び方』/芸術新聞社
  3. 今井凌雪『臨書を生かす 上・中・下』/講談社
  4. 『現代臨書体系』全10巻/小学館
書の基本は臨書。臨書学習用図版集としては、定番の1。図版をみてもどう書いたらよいかわからないという人には、2・3がお薦めです。それで物足りないという人には4がありますが、入門用としては少々個性が出過ぎかも知れません。
なお、ここで出てきた二玄社は書に関する書籍を多く出しています。出版目録なども見てみるのも、参考になるかと思います。(車の本ばっかりじゃないんですよ、、って、このページをご覧の方で車のことをご存じな人は少ないですね。きっと)

篆 刻

  1. 墨スペシャル『篆刻入門』/芸術新聞社
篆刻については、あまり詳しくないのですが、一冊だけを選ぶとすれば、印の作り方と知識、図版も載っているこれがお薦めではないでしょうか。

書道史

  1. 榊 莫山『書の歴史』/創元社
  2. 西林昭一『書の文化史 上』/二玄社
  3. 墨スペシャル『図説中国書道史』/芸術新聞社
  4. 墨スペシャル『図説日本書道史』/芸術新聞社
昔は『和漢書道史』あたりが定番だったようですが、文検のテキストとしても使われたこの本は、いかんせん眠くなります。まず、一冊読むとすれば、1がお薦めです。書のロマンが伝わってきます。そして、書道史は文章で読むより図版を見るようが、、という人には3・4がお薦めです。カラーを含む大きめの図版が魅力。そして、さらに詳しく知りたい人は2か、全集を買うのがよいかと。

書 論

  1. 杉村邦彦 書の基本資料19『書論』/中教出版
  2. 『中国書論体系』/二玄社
まったく書論を読んだことがないというひとは、1がお薦め。たった350円とバカにしてはいけません。書論を読むための工具書の説明から、代表的な書論の紹介まで触れられています。この本を読んでから、これと思うものを、2から選んで読むと良いでしょう。

教 育

  1. 『書写指導(小学校編)』/萱原書房   
  2. 『書写指導(中学校編)』/萱原書房
  3. 久米 公『書写書道教育要説』/萱原書房
  4. 上條信山『新書写書教育事典』/木耳社
  5. 『書写書道教育研究』1−10/全国大学書写書道教育学会、萱原書房

1・2は、教員養成用のテキストですが、参考になる資料もあってお薦めです。3・4は一般的な本です。3はタイムリーな話題が多く、4は歴史から指導案まで総合的です。5は学会誌ですが、最新情報はこれがよいでしょう。



辞 典

  1. 『書写・書道用語辞典』/第一法規
  2. 『書道用語詞典』/木耳社
  3. 飯島編『書道辞典』/東京堂出版
  4. 中西編『中国書道辞典』/木耳社
  5. 『中国書法大辞典』上・下/書譜出版社
割と知られていないようですが、安くコンパクトであなどれないのが1です。さらに詳しいものとして、2・3がありますが、1万円に近い・越える金額となります。中国書法に関しては4と、中国語でも良ければ5が大変詳しいようです。

字 典

  1. 伏見冲敬『書道字典』/角川書店
  2. 伏見冲敬『書道大辞典』/角川書店
  3. 筒井茂徳『かな名跡大字典』/角川書店
  4. 北川博邦『日本名跡大字典』/角川書店
字典の定番といえば『五体字類』でしょうが、さすがにちょっと古すぎるかも知れません。1がお薦め、詳しいのがほしければ中国主体で2、日本主体で3か4にするかそれとも、『唐楷書字典』『王羲之字典』などの個別の字典かに進めばよいでしょう。コンパクトな字典としては他にも出ていますが、私は何となく(角川から金をもらっているわけではないですよ!)このあたりを使っています。

全集類

  1. 『書道講座』(全八巻)/二玄社
  2. 『墨増刊 書体シリーズ』(全6巻)/芸術新聞社
  3. 『中国法書選』(全60巻)/二玄社
  4. 『中国書道全集』/平凡社
  5. 『ビジュアル書芸術全集』(全10巻)/雄山閣
1・2は、古典作品から実作までの総合タイプ。3は廉価の作品集。4・5は図版と書道史、作品論がそろったいわゆる全集です。4は定番ですが、5は最新資料がのっていてカラーも多いです。

その他

  1. 阿辻哲次『漢字の歴史』/大修館
  2. 小松茂美『かな』/岩波新書
  3. 『漢字百科大事典』/明治書院
書の基礎となる漢字の問題。1は漢字の成り立ち等について、2は仮名についてお薦め。3は、少々値がはりますが、漢字について何でも知りたいという人にはよいでしょう。



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