安定して線が引けない(1)

-ひじはあげるか下げるか?-

押木秀樹   


図1-硯の位置と肘の関係  小学校の書写で、毛筆の指導をしていらっしゃる先生からご質問をいただきました。「筆を持つとき、ひじをあげるべきですか、下げるべきですか?」ということです。おそらく、塾に行っている児童生徒で異なったり、一人一人の癖の問題もあるのでしょう。

 基本的には、その子、その人の書きやすい姿勢で書けば良いのではないかと思います。まず、書家を養成する場合などは、必ずしも書きやすい姿勢で書いた方がうまく書けるとは限りません。この後の話は、ごく一般的な場合を考えてみたいと思います。

 やはり字を書くのですから、自然な姿勢、長時間書いていても疲れない姿勢が大切だと思います。その意味では、右の図のどちらが適していると思われますか? そうですね。右の方が自然です。私たちが適度な高さの机に向かって、硬筆筆記具で字を書く姿勢も右ですよね。筆で書くときも基本的には同じなのではないでしょうか。私は合理的な方法で、学習すべきだと思っています。

 繰り返しますが、芸術的な書の作品を書く場合はこの限りではありません。ですから、塾などで書家の卵を養成する場合などは、肘をあげた書き方を教えるかも知れませんね。さて、義務教育では、特にこの問題は大事ではないかと思っています。というのは、現在の国語科書写の目標は、原則的には<実用のため>といっても良いと思います。とすれば、毛筆で学習した内容が硬筆にも生きるものであって欲しいと思います。ですから、毛筆の学習を特殊なものと位置づけるのではなく、自然に硬筆とつながるものであって欲しいと思うわけです。その意味からも、硬筆筆記具で書くときの構え方、上の図では右側の構え方で、毛筆学習もおこなうべきではないかと思うのです。最後に、硯の位置と、肘の関係について気になっていますが、この問題は項を改めて書くことにします。

  (1997.06.01)
参考:
「肘の状態と硯の位置等について-毛筆で横画が安定して引けない子供のチェック事項を考える-」(『石川県書写書道教育』研究集録1997)



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