情報化社会における手で書くことの役割
情報機器を用いた書写書道の授業についての考え方
そして書写書道CAIの現状


を総合した

「情報化と書写書道教育」

があります。少々長いですが、こちらもご参照下さい。

旧版の「書写・書道CAIの現状」は以下の通りです。

書写・書道CAIの現状

 近年、書写CAIについての問い合わせが多く寄せられています。
 ※写真の転載にあたっては、著作権上問題ないものと判断いたしましたが、
  もし不適切な場合は、お詫び申し上げるとともに、指摘いただきたく
  お願いいたします。

 以下の順で紹介していきます。


小中高における実践から


 1996年、各地の書写書道教育の研究大会で、CAIにふれる発表等がおこなわれたようです。私の知る限りでは、香川県と福井県の大会において、この話題がでています。

 1997年度には、全日本書写書道教育研究大会<高知大会>において、パソコンを用いた研究・公開授業がおこなわれています。小学校6年「字くばり 走れ子馬」の若林先生の指導案と、中学校2年「行書(応用)」の松岡先生の指導案の中でパソコンの利用が書かれています。私自身は、これらの授業を拝見することができませんでしたが、松岡先生の授業はビデオで拝見させていただきました。使用ソフト名はどの情報はありません。詳細は両先生にお問い合わせになるしかないかと思います。(わかったら教えて下さい。。)

 ここでは、「平成八年度香川県小学校教育研究会書写教育研究発表会 研究紀要」より香南町立香南小学校の実践の記述を以下に引用しておくことにいたします。詳しくは、紀要をご参照下さい



 次に中学校における実践例として、倉敷市立南中学校における岸田先生を中心とした実践が報告されています。FM-TOWNS を用いた書写学習ソフトで、ひらがな48文字の筆使いを動画で表示し、ポイントを音声で説明するものだそうです。詳しくは、『先生のパソコン活用教本−明日の授業が見えてくる−』/日経BP'94.6 および、『尽墨』('95.8号 千葉大学教育学部書道教育研究会)に紹介されているそうです

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 高校書道に関しては、全国高等学校書道教育研究会の熊本大会にて、古典の各字種を簡易データベース化しておき、検索後それをグラフィックソフトで張り合わせて、作品の雛形とする研究などが報告されています。また、書写書道教育学会岡山大会('96/10/10)にて、千葉県立生浜高等学校の染谷先生も、MacのHyperCard でパソコン墨場必携・書道字典を作り、ドロー系ソフト「どろーえもん」で張り合わせと変形をおこなうことで、生徒たちが作品の雛形を作るという実践を報告している。(右図参照) 特殊な機材なしで行える実践であるが、生徒たちの反応は大変良かったようである。



 同様に、高校での実践として、CAIではありませんが、生徒の作品をインターネットで展示したり、ビデオ教材の自己作成をしている先生として、秋田県立六郷高等学校の竹村先生の実践があります。




研究開発について


 さて、書写については、これまで、香川大学教育学部の山崎敏範先生の「筆記速度分析を導入した書写CAIシステム」(電子情報通信学会論文誌 J70-DNO.11 2071-2076)が知られています。残念ながら、製品化・市販はされていません。

 近年、中部大学の小森早江子先生が、外国人むきの漢字学習・書き方システムQTKanjiを開発しておられます。このCD-ROMは、金沢大学にも一部いただいてありますので、近隣の方は私どもの研究室で試用することが可能です。

 1996年6月15日に中部大学で開催された電子情報通信学会教育工学研究会にて、龍岡・吉村両先生が「外国人・小学生を対象にした漢字教育支援システムの開発」を発表されました。字を書く様子を動画で見て、マウスで実際に書いてみる、そしてその評価を行うことができます。下記の市販ソフトでは、手本をなぞってそれを評価することしかできないのに対し、この発表のシステムでは、なぞることはもちろん、白紙(手本のない画面)に書いたものを評価できる点で、コンピュータを用いない書写学習にかなり近いと思います。評価の項目化・学習のコース化といった課題や、パソコンへの移植のことやマウスによる入力と硬筆筆記具との違いなどの問題もありましょうが、書写学習の個別化に有用な研究と思われます。(写真転載:電子情報通信学会技術研究報告ET-96-21-38教育工学)




書写CAIソフトウェア・市販品について


 書写専用のCAIソフトウェアの市販品としては、香川県のユニティーベルという会社と香川県内の小学校の先生方で、書写CAIのソフトを作成中です。デモ版を試してみました。各教材に対して、「動」「書」「調」というパートから成っています。「動」では筆順を見たり、部分形を動かしてみることができます。「書」では、学習者がマウスで書いて手本と比べたり(図参照)、部分形を組み立てたりする事が出来ます。「調」では、一般的なアドバイスの表示や、字配りの学習などができます。転折の表示の問題など課題はないとは言えませんが、完成が楽しみなソフトと言えそうです。なお、このソフトウェアは、これまで教師が黒板でやって見せてきたことや、子どもたちが紙で出来た部分形を動かして来たことなどが盛り込まれた内容です。

 このソフトウェアも含め、個別化に対応しているという点で評価できるわけですが、今後の方向性としては、教師が対応できない子どもたちの書字運動の部分にまで踏み込めればさらに大きい飛躍が可能だと思います。

 さらに、ADK富士システム株式会社から、1997年6月、電子筆による毛筆文字学習用ソフトウェア 「習筆(ならいふで)」が発売されました。用筆を中心とした学習ソフトですが、字形等の学習にも対応できるかと思います。なお、その場合学習内容の系統化・コース化をどのようにおこなうかという点で一考が必要ではないかと思います。なお、私自身試用版しか使っておりませんので、詳しい紹介は市販版を使ってみてからにしたいと思っています。なお試用版は、WWWで入手可能です。




 その他のCAIソフトウェアで市販されているものとしては、基本的に漢字学習に付随する筆順学習が主となっているようです。私の知るものとして、

1.パソコン国語学習 漢字編(オーク)
2.マイ漢字かきとりレッスン(DATA POP)
3.ナゾラー 漢字筆順学習ソフト(インフォーテック)
4.漢字ワールド(オーク)
5.ひつじゅん先生(詳細不明)
6.漢字書き取りシミュレーション(詳細不明)
7.ことばのせかい(東京書籍) が、あります。

 1.パソコン国語学習は、筆順・部首・音訓・熟語の学習ができます。ただし、OS が 今だに N88BASIC だったりすることと、この場合の筆順は、動画を見るそして何画目か答える形式で、実際に書いてみることができないのが、残念な点です。しかし、表示される文字は、手書き文字であり、安易に明朝体で表示していない点は評価できます。手書きでは本来1画となるところが、明朝体では、(こどもの目には)二画に見えたりするためです。なお、同社の新製品として、4の漢字ワールドについての情報をもらいました。やはり、書写というよりも漢字学習ですが、読み方・部首・書き順・熟語を学習でき、ゲームパートとして目隠し・ジグソーパズル・サッカーなど工夫が凝らされているようです。これは、Mac Windows 両方に対応しているそうです。

 2.マイ漢字かきとりレッスンは、筆順・音訓・部首とその漢字を使ったことばの使用例が学習できます。OS は MS-DOS ですし、ハードディスクからも使えるようですが、マウスインターフェイスがうまくいっていなくて機種によっては動きがなめらかでないのが残念です。また、サンプルに明朝体を使っていることもマイナス点といえるでしょう。筆順学習は、漢字の構成パーツ(一画分)を並べていく形式で、作業的な学習となり、子どもたちの学習に対する楽しさは増すと思われます。

 3.ナゾラーは、かなり書写よりのソフトウェアと言えます。筆順・音訓・部首といった機能に加えて、その字を書くときの注意事項にまで配慮が及んでいます。また、上記の2ソフトウェアと違い、実際にマウスで字を書いてみることができるため、学習の楽しさは大きいと思います。表示される文字は、もちろん明朝体でなく手書き文字が使われています。筆順学習と同時に、字形が乱れると指示がでます。ただし、字形・筆順の評価は、おそらく正規化等を施さない単純な重ね合わせによるパターンマッチングによると思われ、<やさしい>モードでも少し位置がずれるだけで認識しない点は、残念です。また、同じ理由だと思われますが、あくまで手本をなぞるだけで、試しに白い紙に書いて評価を求めることはできません。

 7.東京書籍から、文字や言葉の学習用のCAIソフトとして、「わくわくワード」「漢字マッチ」「ことばのせかい」が発売されています。たとえば、「漢字マッチ」は、へんとつくりのカードを2枚選んで正しい漢字を作るソフトです。このうち、「ことばのせかい」は、「モグモグドン」というパートで筆順学習ができ、「かんじでおえかき」というパートで漢字の成り立ちが学習できる点で、書写的要素を持っていると言えそうです。





さらに詳しい内容につきましては、E-Mail:oshiki@juen.ac.jpまで、
お問い合せいただきたくお願い申しあげます。また、新たな情報がございましたら、ご連絡いただきたくお願いいたします。

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