情報化と書写書道教育 その4


 本稿は、1998年11月兵庫教育大学においておこなわれた書写書道教育学会におけるデモンストレーションを元にしています。このデモンストレーションの概略は、『書写書道教育研究』第13号に掲載されました。しかし、あくまで概略にすぎず、具体的な内容を読むことができないだろうかという声にお答えするため、Web化することとなりました。なお、デモンストレーションは、足利市立足利東小学校の柏瀬順一教諭と本稿の著者押木秀樹との共同ですが、本稿の文責は押木にありますことをお断り申し上げておきます。
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4. 書写書道の学習における情報機器の活用

 それでは、理論的なことはこのくらいにして、具体的な紹介に入ります。

4-1 研究授業等で

 ここ数年、各地の研究大会において、コンピュータを用いた研究授業がおこなわれている。図は香川県の例です。
 具体的にどのようにソフトウェアが用いられているか見ていくことにいたします。


 またこの図は、デモンストレーションにおいて足利市立東小学校の柏瀬教諭がおこなった部分の静止画です。デモにおいては、次の画面における内容も含めて約15分間にわたるビデオにて、実践の紹介がおこなわれました。

 足利東小学校の実践では、先に述べた書写の学習としての図形的な面と運動的な面との、両面からコンピュータを用いた授業がなされているところに特徴があります。
 左図は、子どもたちが書いた字をその場でイメージスキャナを用いて入力、そして、グラフィックソフトウェアを用いて、変形させて字形について学習しているところです。図形的な面での学習内容になっています。


 こちらの図は、用筆の師範をコンピュータによって、提示しているところです。
 用筆に自信がない教師であってもこれを用いればよいといった、消極的な面もありますが、教師による師範や、ビデオによるものにくらべ、児童らが自身で見たいところを自由に何度も見直すことができるという点が、そのメリットといえましょう。



4-2 高等学校における例1:静止画・共有データの利用・加工による雛形 <動画で解説>

 高等学校の例としては、染谷先生の実践があげられます。生徒自身が、古典の習字をして自分のお手本を作るという例です。

 まず、パソコン上に書道字典を作っておき、必要な字を検索します。見つかった字をコピーして、パソコン上の紙に貼り付けていきます。
 もし、その字が前後と合わないようなら、拡大縮小、変形して、雛形として統一感が取れるようにしていくわけです。市販のソフトウェアを組み合わせてこれまで、コピー・はさみ・のりで行ってきた作業をコンピュータ上でおこなうことができます。

 デモ当日は、実際に作業している場面をご覧いただきましたが、ここでは、押木が雑誌『墨』で紹介したいものをご参照下さい。



4-3 高等学校における例2:インターネットによる作品展示(秋田県 竹村先生)

 秋田県の竹村先生は、作品をインターネットで展示する活動などを以前から進めていらっしゃいます。先の分類でいけば、学習活動物の展示の多様化の例と言えると思います。竹村先生によれば、海外からも感想が寄せられるとのことで、国際化へ向けて日本の文化の再評価という意味でも、有効な実践と言えそうです。  具体的には、下記のアドレスから竹村天祐書道記念館をご参照下さい。

 また当然のことながら、生徒らは自分たちの作品を掲示するばかりではなく、インターネット上に掲示された他校や一般の作家の作品を見ることもできます。多様な鑑賞の素材としても有効だと思われます。
 たとえば、「五十嵐康子書道展」のページなどは、展覧会場にいるかのようなバーチャル画廊となっています。同ページは下記のアドレスから、またその他の書に関するリンクリストは、上越教育大学押木研究室のページにございます。



4-4 中学校における例:動画による筆遣いの学習(岡山県)

 比較的早い時期の中学校における例として、倉敷の岸田先生は、ひらがな48文字の筆使いを動画で表示し、ポイントを音声で説明する実践をおこなっています。

<動画で見る>

4-5 日本語教育との関連で 漢字学習支援サービス(中部大 小森)

 このような例は、書写教育ばかりでなく、日本語教育の分野でも進められていて、画面は中部大学の小森先生によるインターンネット上の漢字学習支援サービス*3の例です。師範の自動化として、ビデオ等でもできることですが、見たい箇所をすぐに再生できるなどの点で有利と思われます。岸田先生の場合、音声による説明というマルチメディア的機能を生かしたものとも言えます。
 以下から、小森先生のページにアクセスすることができます。

<動画で見る>



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