情報化と書写書道教育 その3


 本稿は、1998年11月兵庫教育大学においておこなわれた書写書道教育学会におけるデモンストレーションを元にしています。このデモンストレーションの概略は、『書写書道教育研究』第13号に掲載されました。しかし、あくまで概略にすぎず、具体的な内容を読むことができないだろうかという声にお答えするため、Web化することとなりました。なお、デモンストレーションは、足利市立足利東小学校の柏瀬順一教諭と本稿の著者押木秀樹との共同ですが、本稿の文責は押木にありますことをお断り申し上げておきます。
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3. 情報処理機器の発達と、書写書道の学習

 それでは、具体的な紹介に入る前に、情報機器利用の方法等の分類と、そのメリットを簡単に考察しておきます。



 

3-1 情報機器の利用と分類

 まず、書写書道の特性からその学習内容は、「形状」と「運動」とに分けて考えることができます。形状は字形などを、運動は用筆などをさします。
 これまでも、字形などは教科書や黒板で、用筆などについては、直接師範したり、OHPやビデオなどで示すことができました。このように、これまでやってきたことをより便利にする方向と、あとで述べますコンピュータを用いることで可能になることとが分けられると思います。


 次に、期待される効果ですが、黒板やOHPでやってきたことなどの例は、この1番の授業準備の簡便性と有効な提示にあたります。一方、学習の個別化という点では、これまでの方法では限界があり、CAIにより大きく発展する可能性がある部分です。

 前のシートの「授業準備の簡便性」という点では、簡単になる場合とそうでない場合があるかと思います。と申しますのは、その授業・学習活動のために作られたソフトウェアならば、使いこなしも簡単でしょうが、汎用のソフトウェアを用いる場合は、ある程度の知識と慣れが必要となります。

 さらに「補助的な利用」と「コース化されたソフトウェアによる自律的な学習」への方向性が考えられます。もちろん、一切教師が関わらないと言うことではなく、児童生徒が個々の課題を見いだし、それにあった学習活動を展開していく必要がある場合などに、課題を見いだす補助をし、それにあった学習材を提示していくなどの用途も大切だと思われます。



3-2 情報機器を利用することによるメリット

 次に、情報機器を使うメリットから、整理しておきます。このように利用機器の側からの視点も可能ですが、書写書道学習の立場からの整理で、考えてみます。


 コンピュータを使うこと自体の興味・関心、目新しさという点は、今しばらく有効であろうと思われます。

 次の「提示方法の多様化」については、先にお話しした、黒板・OHP・ビデオなどそれぞれに示していたものをマルチメディア的機能で、コンピュータという装置一つで示しうるようになったと考えれば良いかと思います。

 次に「学習者の作業補助」としては、たとえば、左右からなる部分の組立の学習において、左右の部分形を厚紙で作り、児童らが組み合わせてみるといった学習はこれまでもおこなわれてきました。コンピュータであれば、部分形の作成や再使用も比較的簡単なはずです。

 また先に述べたとおり、個々の児童生徒に、どの課題を選ばせるかといった場合、コンピュータが個々の児童の文字を評価し課題を見いだす補助をしてくれたら便利です。この延長として、「自律的学習手段」というメリットがでてきます。

 インターネットの普及により、「学習活動物の展示方法の多様化」が可能となっています。学外、場合によっては海外からも見てもらうことが容易になりました。学校の枠を越えたコミュニケーションや国際化への対応など、授業の広がりが考えられると思います。

 そして、一般の教師としてのメリットで最も大きい点が、「教材の有効利用」かと思います。パソコン上の教材・ソフトウェアで、著作権等の問題がなければ、コピーして利用することもできるわけでして、一箇所にプールしておき必要なときにインターネットからダウンロードして使用することも考えられます。



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