扁と旁の大きさと位置

押木秀樹



 質問、  というのはたぶん、右の図のように、必ずしも扁と旁の高さをそろえて書いた方が整うかというとそうではないという話ですよね。私の授業の中で、左右の部分形から構成される字を整えて書くためには、
  1. 部分形の形状
  2. 部分形相互の大きさ
  3. 部分形相互の位置関係
の3点から考えられるという話をしています。このうちの1については、
「扁旁構造と横書きの問題」において説明しています。その他の2と3についての質問といってよいと思います。

 簡単に答を言ってしまいましょう! 図をよく見て下さい。上端または下端に横画がきた場合には少し余白をとればよい、ということです。以上です。



 あ、「どのくらい余白をとれば良いか」ですって、、適当にとりましょう。適当にとってやれば、十分整って見えるはずです。はい?、「授業ではもっと詳しい話をしていたはず!」。そうですね。ちょっとだけ、その話をしましょうか。

 静岡大学の平形先生という方が、この適当の部分は、名古屋大学の横瀬先生の心理的ポテンシャル場という考え方で説明できるのではないかという仮説を出されました。そのため、私たちのグループでは、心理的ポテンシャル場をコンピュータでシミュレートすることと、人間の感覚の調査することでこの問題を扱うことにしました。横瀬先生の定義で、我々のコンピュータが描いた図が右です。


 さて、これを文字に当てはめてみると、外側から2番目の線(等高線みたいなもの)によって得られる数値と人間の感覚が非常に近いことがわかりました。簡略化して言えば、外側から2番目の線が左右対称に近い形状をしていると、整っているということになります。ただし、「和」という字などのように、そのままでは一致しない字もありました。そのため、「分位感覚」などこれまで書写指導の世界で言われてきた(平形参照)ことで補正をおこない、かなり人間の評価と近い評価ができるところまできました。

 しかし、これをもって、字形が整って見えるというのは心理的ポテンシャル場で説明できるとは、言えません。人間の字形感覚と近い数値が得られると言うだけなのです。ただし、この成果は、書写CAIにおける字形評価部分などに応用できるのではないかと考えています。

 最後に、「相」という字とパターンを大きめに載せておきます。正確にいうと、2番目の線と3番目の線の間ぐらいがもっとも良い結果となるということも付け加えておきます。

 以上非常に簡略にお話ししましたので、さらに詳しい内容をお知りになりたい場合は、「左右の部分形からなる漢字の字形に関する研究(1)−縦方向の大きさに関する感覚と要素−」をご参照下さい!




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