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ちこちゃん・なぜ書き順?の件 |
Date: 2023-11-15 (Wed) |
NHKにて、2023年10月28日に、
チコちゃんに叱られる!
において、
なぜ漢字に書き順がある?
が放送されました。松本仁志氏が出演されていて、ご覧になった方も多かったのではないかと思います。何件かご質問やら、雑談やらをいただきましたので、少し書いておきます。
まず最初にお伝えしたい2点。一つは、手書きに関することを取り上げてくれたことに対し、NHKに感謝したいと思います。そして、どうしても目を引きやすいタイトルにしたり、意外性がある答えにしたりする部分はあろうと思います。その点については、ぜひ、松本仁志氏の著書を読んでもらえたらと思います。この本の読者が増えることが、この番組の最も大きな役割だと思っています。
松本仁志著『筆順のはなし』(中公新書)
そして、ご質問?お問い合わせ的なことで多かった2点については、正確な表現として説明しておきたいと思います。
1点目。今回の問いは、
なぜ筆順は、1つに統一されたの?
であるべきです。そうすると、答えとの対応関係が良くなります。番組で用いられていた「なぜ漢字に書き順がある?」の答えは、正確にいうと今回の番組の答えとは異なってきます。
2点目。番組における「なぜ筆順は、1つに統一されたの?」に対する答えは、正確にいうと、「先生が教えやすいから」ではなく、
児童生徒が混乱しないように
とすべきであろうと思います。番組でも取り上げられていた『筆順指導の手びき』の「1.本書のねらい」における「学習指導上に混乱を来さないようにとの配慮から定められたもの〜」という部分は、教師・児童生徒の区別はありませんが、同「〜学校教育における漢字指導の能率を高め、児童生徒が混乱なく漢字を習得するのに便ならしめるために〜」という部分には、児童生徒のためということが明記されています。いずれにしても、教師は自身がそれまで学んできた筆順とは異なっても、統一された筆順で教えることが、児童生徒のためと考えることができそうです。
繰り返しますが、多少正確さを書いたとしても、興味関心を引きやすいタイトル、意外性を持って見てもらえる回答というのはあり得ることで、それによって興味を持ってもらえることが重要だと考えます。興味を持ってもらえたら、松本仁志氏の著書をぜひ読んでみて下さい。なぜ筆順は1つに統一されたかではなく、学習している筆順の持つ機能性について、うちの関係の論文では以下のようなものがありますので、良かったらご覧下さい。
・菅野・吉池・押木(2020),空筆部の距離を中心とした筆順の機能性に関する研究
ー『筆順指導の手びき』の分析からー,書写書道教育研究,第34号,pp.31-40
・押木(1997), 手書き文字研究の基礎としての研究の視点と研究構造の例,
書写書道教育研究 11号, pp.25-36
・菅野・寺島・押木(2018), 常用漢字の構成要素とその筆順構造の分析,
書写書道教育研究, 第32号, pp.31-40
※調査関係
・押木・迎・龍岡・前田・齋木(2008), 中学生を対象とした学年別漢字配当表
所収全字種の筆順調査結果のパターン別分析,
実技教育研究2(上越教育大学実技教育研究指導センターH19), pp.23-22
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