「情報化」ということばが街に氾濫し、近年は教育関係の本や論文を読んでも、必ずといって良いほどこの言葉が目に付きます。そんなにまで、いろいろなことが情報化と関係するのでしょうか? ましてや書写書道教育と情報化とがどう関わるのか、これをお読みのみなさまも、首を傾げるかも知れません。
心を落ち着けて、硯に水を注ぎ墨をする。そんな光景と、コンピュータとは相容れないもののような感じがします。たしかに、コンピュータもその普及当初は、文字をコードによって扱うのみでした。すなわち、「書」という文字はコンピュータにとっては「3D71」という記号であり、私たちにとっても、画面上にドットで表現された不自然な字形でした。書写書道とコンピュータは相反する方向を持っていたかも知れません。しかし、その後、コンピュータが扱える情報量は圧倒的な勢いで増えていきました。その結果、パソコンはもちろんインターネットでも、WWWなどで画像が扱えるようになって、書写書道とコンピュータ・インターネットとが、逆のベクトルを示すものではなくなったと考えられます。また、ディスプレイやプリンタの表現能力の向上も付け加えておくべきでしょう。
このような状態を迎え、そのコンピュータとネットワークを利用しない手はなく、すでに多くの書写書道教育関係者が、この道具を使いつつあります。
さらに教育課程審議会の答申には、「小学校、中学校及び高等学校を通じ、各教科等の学習においてコンピュータ等の積極的な活用を図ること」という文言が見られるなど、書写書道教育においても、「使える」というだけでなく、「積極的に活用していかなければならない」時期となっているといえましょう。
では、情報化と書写とをどのように考えていけばよいのでしょうか。
@ は、手で書くことが減るであろうといった単純な推測ばかりでなく、情報機器と手書きとの使い分けなどを踏まえる必要があるということで、書写書道教育の目的論・目標論に関する部分といえます。
Aは、パソコンやネットワークを書写書道教育の授業の中でどのように用いるかという問題で、こちらは、書写書道教育の方法論に関する部分といえます。
以下、この二点について、順番に説明しつつ、特にAについて、具体的に紹介します。