補足2:ハードなブラックお姉さんの証し?(朝日新聞):字が薄くなっているのはなぜ? Date: 2023-10-11 (Wed) 
 以下の記事の補足、その2回目です。

  朝日新聞, ハードなブラックお姉さんの証し?(学校の「アレ」は今シリーズ)
  2023.09.19(火)


 筆圧の低下、例えばそれは筋力の低下などに起因するということも考えられます。一方、そうでない考え方もできます。上記の記事では、押木の以下のコメントを使ってくださっています。

    就学前教育が進んだことで、いまの子どもたちは幼いころから鉛筆に慣れ、
    筆圧の調整能力が高くなっている可能性はある。

 もちろん、このコメントは仮説です。しかしまったく根拠がないとは言えません。それは、小学校1年生では筆圧が必要以上に高かったものが、小学校6年生になるにつれ適切な筆圧になっていくという調査結果があるからです。
 この根拠は、1970年代の筆圧研究の成果によるものです。

  南哲,鉛筆に関する教育生理学的研究 
     第二報学年別・男女別にみた筆圧の測定実験
  学校保健研究 18(5) pp.228-240 1976.5 

この研究における調査から、高い筆圧が徐々に適切な筆圧へと低下していくとがわかります。また筆記することの専門家の方が、そうでない職種の人よりも筆圧が低めであることも示されています。

※そんな昔から、筆圧測定がされているの?という声があるかも知れません。実は、
 1970年代、けっこう筆圧測定に関する論文が見られます。もっとも、大正8年
 (1919年)の『書及び書方の研究』(松本亦太郎編『心理学叢書8・8・10』)に
 おいて、城戸幡太郎が、筆圧測定の方法・筆圧の分析・筆圧に影響を及ぼす条件に
 ついて述べていますので、1970年代は当然なのかも知れません。

書き慣れるということが、適当な筆圧で書けるようになるということでもあり、筆圧調整能力の向上であるとすれば、1970年代の結果からは、それが低下の傾向であることが知られています。

 従って、今の子供たちについて筆圧が低下しているように感じられるというのは、どちらかというと、就学前から文字を書き始めることによって筆圧調整能力が高まっている可能性があると考えられるわけです。

 では、なぜ薄い字になってしまうのかということについては、別途書かせていただきたく思います。 

※もちろん1970年代の結果は、現代に当てはまらない可能性もないとはいえません。
 また改めて、南らと同様の調査を行うべきなのかも知れません。誰か、いっしょに
 調査しませんか?


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