■
毛筆学習における準備・片付けと用具について |
Date: 2022-10-06 (Thu) |
先生方にとって、書写学習の難しさ、あるいは書写学習のやりにくさは、学習活動の展開等の問題よりも、墨を扱うことと、そのための準備・片付けにあったりしないでしょうか。以前は、教師自身が毛筆の技能に自信がないことなどから、授業がやりにくいといった声もありましたが、今はICT機器を用いて動画の再生をすることで、その問題は軽減されたといっても良いでしょう。
9月18日(日)に全国大学書写書道教育学会が静岡大学にて開催されました。会長である宮澤正明先生の講演があり、その中で、「書写室」が設置されている例(福井県)が紹介されました。子供たちにとっての学習環境の良さという点ももちろんですが、教員の側も、準備と片付けの手間が軽減される良い方法であると考えられます。
毛筆用具と関わる問題は、授業開始時に用具がそろっていないこと、授業中に書き上がった半紙が乾いていないことによる汚れの心配、授業終了時の筆の後始末と硯に残った墨液の片付けなどではないでしょうか。
このうち、「授業中に書き上がった半紙が乾いていないことによる汚れの心配」については、新聞紙を折りたたんだり、B4サイズくらいに切ってホッチキスなどを用いて冊子状にすることで、挟み込む用具を作成する工夫が各所で紹介されています。
一方、終了時の問題として、特に筆の後始末が問題になっています。500cc程度のペットボトルに水を入れておいて、その中で洗う工夫などもされていますが、洗った後の筆をどうするか、残った水をどうするかといったこともなかなかうまくいかない点のようです。
学校の洗うスペースの問題から、筆や硯を洗うことが宿題になることもありますが、それが授業開始時の忘れ物の問題になるという指摘もあるようです。
今から30年前くらいでしょうか、準備1分・片付け3分といったキャッチフレーズの用具が紹介されていました。記憶が違っているかも知れませんが、おおよそそのような感じでとても便利だと感じました。類似の製品を2〜3種、使ったことがあります。
一番印象的だったのは、用具箱に筆帽ってわかりますかね、筆をさして立てておけるような工夫が、大筆・小筆それぞれにあります。筆に人口毛を用いることで、使い終わったら差しておくだけで、毎回洗う必要がありません。おそらく1学期に1回くらい洗うことで、使用が可能だったのではないかと思います。
硯は、タッパーのようなもので、ふたがロックができるようになっていて、使い終わったら、閉めてロックするだけで漏れない仕組みでした。ですから、学習後には、筆をキチンと差して、硯のふたをロックすれば、基本的な片付け完了ということになります。当時のセットには、紙を挟むものは付いていなかったと思いますが、最初から紙を挟むものもセットにして販売してもらえば、さら良いのではないかと思います。
あのころ、一部で知られていたものの、全国に広がることはありませんでした。時代的に少し早すぎたのかも知れません。いえ、今でも、そんな簡略な用具は、書道につながらないというご意見があるかも知れません。
しかし、準備・片付けの面倒さから教師も児童生徒も解放されることで、毛筆学習を楽しさを味わい、書字の向上を感じ取ることができる方が、これからの子供たちにとってまず必要なことのようにも思えるのです。学習時間の確保にもつながります。
業者の皆さんの中で、そろそろ、そういった発想での用具があっても良いのではないかと思われる方はいらっしゃらないでしょうか。もしいらしたら、ぜひご一考いただきたく思います。現代の技術を用いることで、あの頃よりも良いもの、本質も失うことのないものを目指しても良いのではないかと思うのです。
私にどれだけ何ができるかわかりませんが、よろしければお話しさせていただきたく思っています。ご連絡をお待ちいたします。
- このページの内容について著作権は放棄していません。使用の際は、必ず「著者名:押木秀樹」と「出典:www.shosha.kokugo.juen.ac.jp」「年月日:本ページ上部に掲示」を明記して下さい。
[前頁]
[次頁]
トップ
検索
(管理用)