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なぜ望ましい持ち方で持てないのか? |
Date: 2021-10-22 (Fri) |
小学校低学年を担当する先生方から、子供たちの筆記具の持ち方が悪いという指摘が頻繁になされます。私が大学の教員になった頃には指摘されていましたから、かなりの長期間になると思います。そのことからすると、子供たちの筆記具の持ち方だけでなく、大人たちの筆記具の持ち方の問題でもあると思います。
別のところで、以下のように書きました。
なぜ「いわゆる正しい持ち方」、「望ましい持ち方」は、こうであるべきなのか?
今、重要なのは、巧緻性を十分生かすことができない持ち方で、微細な書字動作を
していることの理由を明らかにして、対応することではないかと思います。
なぜ、私たちは巧緻性を十分生かすことのできる持ち方ができないのでしょうか。
その答えは、尾崎康子先生の一連の研究、特に、
尾崎康子(2000), 筆記具操作における上肢運動機能の発達的変化, 教育心理学研究,2000,48, 145-153
が参考になると考えます。
同論文では、「筆記具操作における上肢運動発達は,運動発達の原則に従って,近位の運動から遠位の運動へと移行し,最終的には最も遠位の指の動きを獲得するに至るであろう」ことなどが仮説として提示され、その結果が示されています。(説明が雑ですみません。ぜひ論文をご覧下さい。)
そのことから、現在の状況を類推したとき(あくまで類推であって調査・研究してはいません)、幼少時、肩・腕など遠位から中位の動作から手首くらいの動作を獲得している段階で、筆記具を持ち、書字を始めた場合、遠位の発達=指の動作の発達が十分ではないことから、手指はあくまで筆記具の固定に用いられ、肘から手首くらいで書字動作をおこなおうとする。その動作が学習されたすれば、指を用いた微細な調整をおこなう動作を用いることなく、字が書けることになる。とすれば、いわゆる筆記具の持ち方は、固定されていればよいと極論されるかも知れません。
説明が雑であろうかと思います。改めて詳しく書き直す機会があれば、そうしたいと思います。
以前、平成10年学習指導要領の解説に、筆記具の持ち方は、形式的な形のみを指すものではなく、運動を高める機能性に裏付けされたものであるべきことが記されている。持ち方の形を変えるのではなく、指の動きを書字動作に適切に用いることができるようにすること肝心であると言い換えることができるのではないでしょうか。
では、形ではなく動作を変えるにはどうしたら良いのでしょうか。
うちの研究室としては、以下のようなことも、動作を変えるために一つのきっかけになるのではないかと思っています。ただし、以下の論文ではそのための方策に触れるところまで到っていません。
押木(2021),書字学習初期における緩衝機能付き硬筆筆記具の効果
−点画の書き方・筆圧の改善と書字意識から−
書写書道教育研究 35号, pp.53-64
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