字体・書体・字形の概念をどこかで勉強する機会 Date: 2021-08-06 (Fri) 
 字体・書体・字形の概念は、それを専門とする領域や、その周辺の領域を専門とするものであっても、難しいあるいは難しい部分を持つと思います。(わからないけれど、知ってみたいという方は、後で紹介する「〜指針」をご覧いただきたいと思います!)

 ただ、厳密な定義や、深い理解である必要はなのですが、字体・書体という概念があることを、どこかで勉強する機会を設けるべきではないかと思えてなりません。たとえば、義務教育段階、中学校3年生くらいで知っておくといったことが望ましいように思います。大学生と話をしていて、理解してくれますし興味も持ってもらえるのですが、用語と概念の結びつきを作るという点で、もう少し早い段階が望ましいように思えるのです。
 文字や書字の学習は、ツールの使いこなしの学習であるとも考えられます。しかし、その内容には、文化としてのおもしろさやすばらしい機能性などが含まれています。単にツールとして使いこなせるだけではなく、そのおもしろみや素晴らしさを知っておくことが肝心だと思います。現在の学校教育ではその部分の比重があまりに少ないのではないでしょうか。

 書写教育と字体・書体・字形の関係については、

  「常用漢字表の字体・字形に関する指針(報告)」
   (平成28年2月29日 文化審議会国語分科会)
   https://www.bunka.go.jp/koho_hodo_oshirase/hodohappyo/pdf/2016022902.pdf

においても、多少触れられているところです。現在の書写教育と、字体・書体・字形の関係については、1990年頃に全国大学書写書道教育学会の有志でもたれていた書字学研究会で検討などにたどり着きます。その内容は、

  「手書き文字研究の基礎に関する諸考察」,『書写書道教育研究』第7号, p.105-84,(1993)
  
ほかである程度まとめてはいます。
 しかし、その時点での検討では、字体と書体との包含関係やその他の事象について十分検討が行われたとは言えず、明確に記されていない。昨年度、『大学書道研究』に以下の論文が掲載されたことを、紹介しておきたい。

 杉山勇人(2021), 書道研究における「字体」概念に関する一考察, pp.29-40, 大学書道研究14 

特に1:経緯についての理論的考察と、2:字体と字形の関係について歴史的視点からの問題提起が、重要だと思います。

 こういった研究が進むことで、内容理論が安定し、それが学校教育における内容化につながってくれると良いのですが、、。願っているところです。

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