2006 ゼミ旅行(東京)

2006.11.18-19  東京都美術館・東京国立博物館・書道博物館・三井記念美術館・相田みつを美術館他

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はじめに

 私どものゼミ旅行は、東京と関西とに隔年で出かけています。時々、顔ぶれによっては、別の場所へ旅行することもあります。本年度は、2年ぶりの首都圏へのゼミ旅行です。参加者は、ゼミ生6名+教員となりました。以下、その様子をご紹介します。
 なお、この研修旅行は、実践セミナー・実践場面分析演習という授業の一部としても位置づけられており、このページはその報告の一部を用いています。


11/18 午前: 東京都美術館<日展>

 ゼミ旅行初日、東京・上野に上陸した私たち一同は、駅横のジャイアントパンダを見ながら上野恩賜公園内にある東京都美術館へ向かった。公園内には様々な美術館、博物館が隣接するほか、紅葉が美しい時期でもあったのでとにかく人が多かった。

 都美術館では日展が開催されていた。日展は、日本を代表する美術展覧会のひとつにも数えられる伝統ある美術展である。名称は、「日本美術展覧会」の略であり、またその展覧会を運営する団体の名でもある。1907年から開催され、来年で100周年を迎えることになっていた。入場した私たちは書の会場に向かった。

 会場に到着した私たちは、厳しい審査を通過してきたレベルの高い作品にしばし見入った。一口に書といっても、様々な種類の作品が並んでいる。漢字、仮名、篆刻、調和体。どの作品も繊細、重厚かつ奥行きを感じさせる作品ばかりであった。
 ゼミで統一して見て回ったのは書の分野のみで、見終わった人は、時間の許す限り他科の作品を見て回ることになっていた。私も書以外のほかの4分野(日本画・洋画・彫刻・工芸美術)の作品を見て回っていたが、どの分野でもレベルの高い作品が並んでいるにもかかわらず人の波にもまれてしまったので満足に見て回ることはできなかった。しかし、価値のある芸術作品に多数ふれることが出来、日展を見にこれてよかったと思った。

 レベルの高い作品を見ることで、自分の書道に対する姿勢や課題を見つめなおすことが出来た。また、自分の修士論文についていろいろとやりたいこともでてきた。書道という芸術に対して、そして書写書道教育に対して、多くの人が日展を訪れ作品を鑑賞することで、自分と同じように芸術に対する興味や関心を高めて行くのだろうと感じた。来年の日展も、また見に行こうと思う。
<担当:白石>


<担当:寺島>

11/18 お昼:東京国立博物館

 東京都美術館で日展を見たあとは、すぐ隣の東京国立博物館へ行きました。去年は奈良国立博物館と京都国立博物館へ行ったので、これで国立博物館は3つ目です。あとは九州を残すのみ!いつか行きましょう。まずは昼食をとりました。

 いくつか館がありますが、最初は東洋館を見ました。エジプトで出土したミイラが展示してあり、ずーっと昔の人間が、こうして目の前に横たわっているというのは不思議な感じがしました。パキスタンの仏像は、日本の仏像とはやはり顔つきが異なっていて、イケメンでした。  次に本館を見ました。時間がなくて、二階をさらっと見る感じになってしまいました。

 小林斗あん氏が寄贈した中国印譜が展示されていました。徐三庚(じょさんこう)趙之謙(ちょうしけん)・呉譲之(ごじょうし)などが有名で、それらのものもありました。篆刻、私もやってみたくなりました。(買ってきたので今度作るぞ!!)  亀田鵬斎は、なんと良寛さんに会ってから、書風が変わったようです。

<担当:寺島>

11/18 午後: 書道博物館

 書道博物館は、中村不折が収集した書に関する品々が展示してあった。今回の特別展でメインとなっていたのが、広開土王碑の拓本であった。高校の社会の授業で存在は知っていたものの、実物大の大きさを目の当たりにすると、その大きさに驚かされた。これは、高句麗の19代王である、好太王をたたえるために建てられたものである。これを拓本にしたときは大変だっただろうと思う。文字の形も面白く、「看」という字の「目」の部分がとても大きかったのが印象的だった。めったに見る機会がない、実物大の拓本を見ることができたのは、とても貴重だったと思う。

 そのほかにも、さまざまな石碑や、拓本、仏像、印、硯などがあった。石碑の中でも、三体石経というものがあり面白いと思った。これは、ひとつの文字が、古文、小篆、八分隷の三書体で書かれてあるらしく、それぞれ、全く違っているようなものも合った。
 これだけの作品をたった一人で集めた、中村不折の情熱は、すばらしいと思った。この人は、書家であり、画家でもあるらしく、書の作品は、面白い形をしたもののあるようだった。また、絵も数点展示してあり、才能が豊かな人だと思った。扇子に、鯉が描いてある、面白い作品が展示してあったが、あれのレプリカが売っていれば絶対買っていたのになぁ。本当に、書や絵を愛していた人だったのだろうと思う。 <担当:神代>

11/19 午前: 三井記念美術館

 2日目の最初に行ったのは、三井記念美術館でした。三井記念美術館までは東京駅から歩いていきました。美術館までの道には、大きなビルがたくさんあり、その中でも特に印象的だったのは日本銀行の建物でした。外から見ているだけでも、思わず「すごい!!」といってしまうほどでした。また日本銀行と道を挟んだ隣に、貨幣美術館がありました。さらに19日には東京国際女子マラソンがあり、ちょうどその通りを走るらしく、○○さんは高橋尚子が見たいと言っていました。しかし結局は予定通り、全員で三井記念美術館へ行きました。三井記念美術館はとても高いビルの中にあり、外から見ても美術館があるとはとても思えませんでした。また、エレベーターが映画の中でしか見たことがないような、レトロチックでかっこよいものでした。美術館に入る前に圧倒される感じがしました。

 三井記念美術館では、特別展「今輝く、中国古典美術の遺宝『敦煌経と中国仏教美術』」を見ました。三井記念美術館が所蔵する、世界に現存するなかでもトップクラスの「敦煌経」34点と、この「敦煌経」の展示に関連して、同じ敦煌の石窟から発見された東京国立博物館、白鶴美術館、久保惣記念美術館が所蔵する幡、仏画、画巻など極めて珍しい作品を見ることができました。「敦煌経」とは、中国の敦煌の莫高窟石窟の一つから偶然に発見された多量の経典類のことです。今から1000年ほど前に何らかの理由で納められて密閉されたものが、100年前に発見されて初めて明らかにされたというドラマチックな歴史をもった写経です。蓮華経、維摩経、涅槃経などがありました。とても1000年前のものとは思えないほどきれいなものばかりでした。字が読みやすかったので、書の初心者である私には分かりやすくてよかったです。書物の中には新しい漢字が使われているものがありました。日、地、月、人など何種類かの新しい漢字が書かれていて、見つけるのが楽しかったです。ただ一つ残念だったのが、仏像の台座に彫ってあった字を見逃したことです。先生に後で教えてもらいましたが、もう美術館を出てしまっていたので見ることができませんでした。仏像もよく見たつもりでしたが、やはり先生は見るところがちがうなと思いました。三井記念美術館の雰囲気は他の美術館とは違い、暗めの落ち着いたところだったので、気持ち的にも落ち着いて見ることができました。
<担当:羽田>

11/19 午後: 相田みつを美術館

 1996年、銀座にオープンし、2003年に東京国際フォーラムへ移転、今年で開館10周年を迎える相田みつを美術館。常設企画展では、自分の書・自分の言葉で「いのち」を見つめ続けた生涯の作品が展示されていた。広く知られている作品だけでなく、臨書作品や感じの違う作品もいくつか見られた。しかし、線の波打ち具合や字形にみつをらしさは表れていたように思う。また、みつをが読んでいた本に挟まれていたメモから、みつをの言葉の源が垣間見えたり、創作台から仕事をしているみつをの姿を想像したりした。みつをの生涯を、書かれた作品の変遷や傾向をもとにたどってみたい気持ちになった。館内は生前の相田みつをが毎朝散策した古墳の山をイメージし、珪藻土で覆われている。その他にも電子井戸や電子ブック、手水鉢などのメディアを活用した展示など、見るものを飽きさせない工夫、ゆったりとくつろげる工夫がなされていた。

 開館10周年を記念して特別企画展も催されていた。その内容は、3点で構成される。1:開館10年の間に発見された若き日の作品を公開し、初期相田みつをの魅力に光を当てる。2:約20回に及んだ個展の資料や未発表原稿を元に、創作の歩みをたどる。3:ロングセラー『にんげんだもの』『一生感動一生青春』(文化出版局)等に収録されている代表作の、晩年に書き改めた別ヴァージョンを公開し、書体の変遷を紹介する。その中でも、私が特に印象に残っているのは、日展に入賞した作品である。「古い封建的な溥統に安易に縛られてゐる窮屈な書の世界に 若い私の魂はたまらない息苦しさを覚える そしてこの息苦しさの中に何時までも喘いでゐなければならない君 あえいでゐたいのかも知れない あはれな私の宿命なのか」これはとても衝撃的であった。この想いこそが、みつをの書活動のエネルギーであったのではないかと思うし、何か私の卒論につながるヒントが隠されていると感じた。
 美術館には幅広い年代層の多くの人が訪れており、皆、相田みつをの世界に浸っていた。「もう腹いっぱいになっちゃった。」と言って美術館を後にする人もいれば、作品の前で涙を流したり立ち尽くしているような人も見られた。一人ひとりが、今の自分に相田みつをの書や言葉を投げかけ、重ね合わせているのだろう。ただ「美しい」「好き」だけではない、人々の心に届き、魂を揺さぶる相田みつをの作品。その魅力を十分に堪能できた。

<担当:石見>