2004 ゼミ旅行(東京)

2004.05.22-23  3館拓本展(東博・書博・三井文庫)・静嘉堂と玉川堂ほか

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はじめに

 私どものゼミ旅行は、東京と京都とに隔年で出かけています。時々、顔ぶれによっては、別の場所へ旅行することもあります。昨年度は、新潟県内の美術館等を回りました。そのため、3年ぶりの東京へのゼミ旅行です。参加者は、ゼミ生と書道部の希望者の計7名に、都内にいるOBの2名が参加してくれました。以下、その様子をご紹介します。


5/22 午前: 東京国立博物館

 ゼミ旅行1日目、上野駅から徒歩にて、東京国立博物館に向かいました。 修学旅行生を横目に見つつ、上野動物園に後ろ髪を引かれながら進みました。 まずは、周時代の甲骨文を見ました。 小さな骨片に刻まれた甲骨文字が可愛かったです。

 次に、東洋館にてこの旅行のメイン「拓本−3館同時開催による名品展−」を見ました。
   ・篆書:石鼓文
   ・隷書:乙瑛碑、礼器碑
   ・楷書:皇甫誕碑、多宝塔碑、九成宮禮泉銘、
       楊大眼造像記、道因法師碑
   ・行草書:蘭亭叙、十七帖、集王聖教序、争座位稿、雁塔聖教序
などなど、これまで印刷物でしか見たことのない有名な古典がずらりと並んでいました。 切り取られ、帖になっているものから全拓のものまで、その形も様々でした。

 本館に向かいながらミイラを見ました。 時間に限りがあったので、とりあえず見たい物に直行しつつ、脇の所蔵品をチラチラ見ました。
 本館にて国宝:風信帖を見ました。 拓本ばかりを見てきた中で、真跡の雰囲気は新鮮に感じられました。 墨の濃淡などからは筆速や動きが感じ取られ、ごく身近に書かれた感じすら覚えました。

 その後、博物館地下のミュージアムショップにて買い物。 個人的なオススメは、スライドが用いられているしおり。 定番の絵はがきや、手ぬぐい、メモ帳、スタンプなどもお手頃で買い求めやすいです。 埴輪のぬいぐるみも可愛かったです。

 昼食は、国立博物館内のレストランにて。 落ち着いて静かな雰囲気はよいのですが、学生には少し高価な印象も受けました。 スパゲティにするかカレーにするかで迷いました。
<担当:岡山>

5/22 午後: 書道博物館

 正直、立地条件は悪いのですが、内容は充実していました。中村不折記念館に入って左側の大型展示ケースの中にある約5メートルの作品「中村不折・臨 顔真卿裴将軍詩碑」にはその大きさと豪快さに驚かされました。特別企画展「拓本−3館同時開催による名品展」が開催されており「顔真卿・多宝塔碑」や「王羲之・定武蘭亭叙」など55点の作品が展示されていました。本館には金石関係(玉器、陶器、仏像、亀甲獣骨文などを含む)327点が展示されており、書の歴史を直に見ることができました。<担当:永井>

5/22 夕刻: 神田(玉川堂・飯島書店ほか)

 神田古書店街の一角にある老舗書道用具店です。文政年間に筆墨硯紙の専門店として九段下中坂にて創業以来180年滝沢馬琴・漱石・荷風・晶子・茂吉・白秋・犬養木堂と多くの文人墨客に愛用された江戸筆の伝統を今日迄墨守し、遠く中台韓国は勿論、欧米からも書を愛する人々が来店されているそうです。店内にはさまざまな種類の筆と紙、硯などの書道用具が並んでいました。私達が着いた時には営業は終わっていたのですが親切に店内に入れてくれました。あれほど多種の筆や紙を一度に見たことがなかったので驚きました(そのうち一本を購入しました!)神田を訪れる際には是非寄ってみてください。<担当:永井>

 地下鉄都営新宿線の神保町駅を中心に神田古書店街が広がっています。今回は書道関係・中国関係の書籍のあるお店を中心に見て歩きました。最近は古書もインターネットなどで手にいれることが可能となりましたが、やはり実物を手にとって見ることができる点ですぐれたものがあります。書道・篆刻・東洋美術の専門書の「飯島書店」には2階に書道関係の書籍・法帖などがところ狭しと並んでいます。さらにその奥の部屋には様々な拓本が掛けられていました。またすずらん通りにある東洋・中国関係の専門書の「内山書店」も人気の店です。 何店か回ったころにはすでに2時間以上経過していました。〔渡邉 明〕



5/23 午前: 三井文庫

 ここ三井文庫別館は、西武新宿線「新井薬師前駅」より徒歩7分の閑静な住宅街のなかに佇んでいます。

 今回の3館同時開催による拓本展は、三井高堅〔たかかた〕・聴氷閣(ちょうひょうかく)のコレクションであり、書の愛好家にはいわゆる「聴氷閣本」として世に知られたものです。なかには「石門頌」や「九成宮醴泉銘−海内第一本」「石鼓文−中権本−」など貴重な宋時代の拓や、原碑がすでに失われ唯一現存する作品である孤本(「孟法師碑」「孔子廟堂碑」等)も数多く含まれています。東京国立博物館や書道博物館に出陳された拓本との比較ができ、同じ精拓であっても随分感じがちがっており、その点でも興味深いものがありました。また「明拓曹全碑」「宋拓温彦博碑」「宋拓石門頌」などは今回が初公開の作品です。

 また財団法人三井文庫は、2005年秋に東京都中央区日本橋室町の三井本館7階に「三井記念美術館」を開設する予定だそうです。  〔渡邉 明〕




(二子玉川で昼食)

 2日目の昼食は、二子玉川駅傍(徒歩3分程度)にて。ここでは、東京在住のOBとの待ち合わせもかねて、ゆっくりと食事が取れました。
 スパゲティ、某大物歌手Yさんも食べたというカレー、中華、洋食、その他ファーストフード、などなど。
 どのお店も、店内・中央に位置した共同テラスどちらでも良いということなので、 個人個人好きなものを注文し、みんなでテラスにて食べることになりました。 私はスパゲティレディスセット:明太子と青じその和風スパゲティ、サラダ・ドリンク付きを注文。
 大空の下食べるランチは格別ということで、おいしく感じました。春の昼下がりということで時期的にも◎でした。
<担当:岡山>

5/23 午後: 静嘉堂文庫

 静嘉堂文庫美術館では、奈良時代から昭和時代までの数々の書作品を初め、書状・絵巻・墨蹟などが展示されていました。静嘉堂文庫美術館には、主に肉筆の作品が多く、ここに来るまでに拓本の作品を多く見てきたために、とても新鮮味がありました。国宝である藤原公任の倭漢朗詠抄大田切や、重要文化財である平治物語絵巻なども展示されていました。 屏風の作品がとても印象に残っています。悠々と書かれた文字は金色に装飾された屏風ととてもマッチしていました。どの作品もそれぞれの美しさがあり、作者の思いが伝わってくるような気がしました。 <担当:田中>


(静嘉堂文庫近くの八幡宮にて)

 今回の旅行では、OBとしてゼミのO君と、書道部のSさんが顔を出してくれました。Oさんは、Y.M.さんという有名人のファンであり、そのファンの中でも知られた存在。二子玉川は、彼にとって重要な街のようです。

 そもそも、静嘉堂文庫の周辺は、緑も多く落ち着いた住宅街でした。静嘉堂文庫から、その裏口を抜けると八幡宮の鬱蒼とした杜になります。その八幡宮の鳥居の側に、比較的新しい燈篭があり、裏側にはそのMご夫妻の名前がありました。右の写真で、確認できるでしょうか。

 このご夫婦のお名前の文字、直筆を刻していたのではあれば、今回の旅行の目的である石刻の文字(拓本)を見るという点とも一致していたのですが、どうもそうではなさそうです。その点は、少し残念なわけですが、O君のおかげでY.M.さんのファンにとっても珍しい物を見せてもらうことができました。なおO君によると、Y.M.さん直筆の石刻資料も某所にあるのとのことです。すごいですねぇ。(押木)



まとめ

 一泊二日で東京に行ってきた今回のゼミ旅行では、4つの美術館等を巡り多くの拓本や肉筆の作品を見ることができました。それぞれの美術館で同じ拓本の作品を見ることもありましたが、何度見ても良いものでした。美術館の他にも、神田古書店街で沢山の書籍を見ることもできました。また、書道用品店にも行くことができ、書道用品の品揃えの素晴らしさに興奮することもありました。まさに書写・書道ゼミらしいゼミ旅行ができたのではないかと思います。一度にあれ程多くの作品を見る機会はなかなかないことだと思うので、本当に勉強になった旅行でした。作品を見る目が少しずつでもできていけば良いと思います。何よりも本ではなく生の作品に触れることができたことに今回のゼミ旅行の意義を感じました。<担当:田中>