<========================= 選択のページに戻る ========================>

第三十四回全日本書写書道教育研究会<東京大会>報告

 第三十四回を数える全日本書写書道教育研究大会(以下、=全書研)が、東京・千代田区の二松学舎大学・千代田富士見小学校・大妻中学校などを会場に、九月十六日から十八日まで開かれた。

 今年は「生涯学習の基礎を培う書写書道教育」をメインテーマに、小学校部会は「持続する意欲と基礎能力を育てる書写指導」、中学校部会は「豊かな文字感覚と学習方法を身につける書写指導」、高校部会は「生涯にわたって書を愛好する心を育てる書道教育」、大学部会が「生涯学習の推進に必要な教員養成における教科教育の在り方」の各テーマのもと、公開授業や活発な討議が行われた。

 小学校教育は生涯教育というには初期の段階にあるわけだが、小学校部会においては、子どもたち自身が自分の字を見つめ学習課題を把握し自己学習力を高めることに主眼をおき、またそれを日常の授業としていくための工夫がなされた公開授業がおこなわれた。

 中学校部会では、現行の学習指導要領によりながら、その枠の中で情操教育という面を盛り込んだ私立学校らしい研究授業を参観することができた。同部会の研究会では、日常に役立つ行書の指導はどのようにあるべきか、活発な討議がなされた。毛筆で習う行書が日常の硬筆の速書きにまったく生かされないという意見も出され、参加者全員が考え込む場面もあった。また速書きのための行書も習いはじめにはゆっくり書いて学習をすべきだという意見など、今後取り組んでいくべき課題も多いように思われた。残念ながら、筆者は高校部会の授業・討議に参加することができなかったが、充実した研究会が持たれたことは容易に察しがつく。

 毎年恒例の講演であるが、今回は元文部省視学官で同兵庫教育大学教授の藤原宏氏が「伝えるものと伝わること」と題して、執筆法・用具の持ち方を中心とした講演を行った。

 本年の全書研の目玉としては、東京大会としては二十年ぶりに公開授業をおこなったこと、私立学校での公開授業がおこなわれたことなどがあげられるが、さらに工夫された書写書道用具が業者によって展示されたこともそのひとつとしてあげられる。昨年度の静岡大会では、準備一分片づけ二分という簡略化された毛筆書写用具が一部に用いられていたが、本年は複数の会社の用具が展示されており、便利な用具を幅広く選択できるようになるのも間近かと思われた。

 少々余談となるが、懇親会の席において個人的におうかがいした話で興味深いものがあったので、紹介しておきたい。東京都内のある先生から、うちの小学校には書写室があるという話をうかがった。用具もすぐ使えるような状態にしてあるため、書写の時間は児童が教室に行けばすぐに授業が始められる。それによって、硬毛関連学習も容易になったこと、教師の立場からすると毛筆書写の時間には教室をよごしはしないかと気が気でなかったり、教師自身準備が面倒だという気持ちがあったが、それらから解放されたようだという意見が聞かれた。また昨年度の静岡大会でも、書写の補助教材(敷き写し用骨書きなど)や教材の系統図を全校で用意して各教師の負担を軽減するという試みが見られた。静岡大会での試みは研究発表校でのものであったが、本年度の懇親会の席においては発表校以外の先生からも、各教師が補助教材を作ったら全校で使えるようにストックしておき、あとでその単元に入る時は印刷するだけにしてあるという話を聞くことができた。多様な補助教材を簡単に使えるようになったため、一時間の授業の中でも個々の児童の力にあった補助教材を渡してやることができ、一石二鳥だという声が、日常的な教育活動として聞かれたことは有意義であった。

 来年度の全書研大会は、秋田にて開催されることが決定している。更なる充実を期待して、東京大会の報告をしめたい。


<========================= 押木研究室に戻る ========================>