平成16年度全国大学書道学会・徳島大会に参加して

報告者:上越教育大学大学院  渡邉 明
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※本文章は、実践場面分析演習の課題の一環として提出されたものを、掲載させていただいています。

 平成16年度全国大学書道学会徳島大会が10月10日(日)に四国大学「交流プラザ」で開催された。午前中は総会の後、3会場に分かれて10の発表が、そして午後は記念講演のあと2会場にわかれて4件の研究発表が行われた。発表は以下の通りである。

 午前の部 第1会場 高閑狂草考                  武蔵野大学院生    大畠真奈
           阮元「南北書派論」における「南」と「北」   東京学芸大院生    草津祐介
           銭?の書法への一考察             四国大学       森上洋光
           魏晋南北朝時代の女性の墓誌に関する検討    愛媛大学       東 賢司
      第2会場 北方心泉の書‐「文字の交」を考える      東京学芸大院生    鈴木 綾
           千字文の研究-その使用と実態について-       徳島中央高校     大林佳代
           日本古代「私印」の研究‐楷書体の使用に関連して‐
                                                       立教新座中高校    杉山勇人
      第3会場 高芙蓉の顕彰と墓碑の流伝           熊本大学       神野雄二
           河東碧梧桐俳句書の仮名の考察         武蔵野大学院生    菊沢絵美
           尾上柴舟の「調和體」に関する考察       横浜国大附属小学校  柳澤ももこ
 午後の部 第1会場 梧竹を中心とする近世書人に関しての資料分析  新潟大学       岡村 浩
           都府楼三碑の意義               四国大学       豊島嘉穂
      第2会場 「伝西行筆」の古筆のデータベース化の試みとその意義について
                                  広島大学院生     塩出智代美
           字座における視覚誘導場と体験的表現との矛盾について
                                  名古屋市立大院生   沓名健一郎他

 「高閑狂草考」については、高閑の作品の中の狂草の割合が懐素や張旭に比べて極端に低い。狂草の割合が少ない場合でも狂草作品として位置づけられていることを分析している。

 「千字文の研究-その使用と実態について-」は、一般によく知られている千字文がどのようにして成立しさらに日本においてその後どう学ばれてきたかを考察している。書道の技法を学ぶ面と内容における文学性の両面がわれわれのなかに行き続けていると結んでいる。

 『日本古代「私印」の研究‐楷書体の使用に関連して‐』では、日本古代の私印に注目し、なぜ印文に楷書体が多く使用されたかを考察している。私印では一字または二字印の場合、そのわかりやすさ・読みやすさを求めたことで官印との識別をしているとしている。

 『「伝西行筆」の古筆のデータベース化の試みとその意義について』では、伝称される西行の古筆が多いのでその資料をデータベース化し検索・影印の印刷・必要情報の抽出等を行う。さらにこれらを使って書風の分類・書写年代の考察等を試みようとしていることが報告された

 「字座における視覚誘導場と体験的表現との矛盾について」では、囲まれた空間のポテンシャル場が視覚の異方性により偏向を受けているかを口の部分と口以外の部分とのポテンシャル場の関係を数値化してみた。口は横に広がっているがそれは白銀比1:1.414が関係していると考察している。「口」のように囲まれた形は小さく書くとされているが、このこととの矛盾は今後の課題としている。 

 なお次年度は千葉大学を会場にして平成17年9月に開催される予定である。