<========================= 選択のページに戻る ========================>

第六回書学書道史学会大会に参加して

 

新谷幸一(金沢大学大学院生)   

 平成七年十一月十一日、十二日の二日間、新潟県南蒲原郡下田村の諸橋轍次記念館において、第六回書学書道史学会大会が開催された。初日は激しい雨の降る中での開幕となったが、午後には大会の成功を祝うような大きな虹が架かり、多くの参加者の目を奪った。
 今回の大会では十名の発表者があり、その発表題目と発表者については以下のとおりである。

一日目
 @「鳥篆考」 鶴田一雄(新潟大学)
 A「内藤湖南と澄懐堂収蔵の中国書画」 杉村邦彦(京都教育大学)
 B「中華民国故宮博物院本『古京遺文』について」 鈴木晴彦(昭和学院短大)
 C「線・形象・時間」 萱のり子(奈良教育大学)
 D「『淳化閣帖』王羲之の書蹟における否定詞“不”の効用について」 細谷一郎(日本大学)
 E「新しく出現した荻生徂徠の書跡」 大庭脩(関西大学)
二日目
 F「小萬柳堂主/廉泉と呉芝瑛」 鈴木洋保(神戸大学)
 G「近世日本における隷書体受容に関する一考察」 岩坪充雄
 H「竟山の将来した書法資料/山本家に残る資料を中心に」 大橋成行
 I「滑川澹如について」 柴田光彦(跡見女子大学)

 「内藤湖南と澄懐堂収蔵の中国書画」は、今年が内藤湖南の生誕一三〇周年に当たることから、杉村氏が記念の意味を込めて発表を行った。内藤湖南は澄懐堂美術館の蔵品に多くの題簽や題跋、識語などを残すとともに、『澄懐堂書画目録』にも序を記している。杉村氏は、これら湖南の序・跋・識語および他の湖南関連資料によって、澄懐堂の蒐集した中国書画の性格について考察を加えた。また、澄懐堂の蔵品を収集した二峰山本悌二郎と湖南の交遊についても触れている。
 本大会では研究発表の後に特別鑑賞として、諸橋轍次作品一〇点、中林梧竹作品九点、慈雲尊者作品五点、池大雅作品二点、貫名菘翁作品二点が展示され、多くの参加者の目を楽しませた。また、二日目の特別鑑賞の前には新潟大学名誉教授三浦思雲先生の慈雲尊者の書についての講演があった。さらに、十一日の午後六時からは、越後長野温泉嵐渓荘で懇親会も開かれ、約八十名の会員らが親睦を深めた。
 来年の大会は、十一月十六日(土)十七日(日)の二日間にわたり、大阪・南河内郡に昨春オープンした府立近つ飛鳥博物館で開催される予定である。


<========================= 押木研究室に戻る ========================>