平成18年度全国大学書道学会・愛知大会に参加して

報告者:上越教育大学大学院 八長 康晴
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※本文章は、実践場面分析演習の課題の一環として提出されたものを、掲載させていただいています。

 平成18年度全国大学書道学会・愛知大会が10月4日(水)、名古屋国際会議場にて開催された。はじめに、日程の概略を以下に述べる。まず、午前中9:30〜10:20まで総会を行い、その後、10:20〜12:00まで研究発表(1)が行われた。午後は13:00〜14:20まで、徳川美術館(企画情報部長)の四辻秀紀氏の大会記念講演「平安時代の仮名 ―書風と料紙の変遷―」を拝聴した後、14:30〜16:00まで研究発表(2)が行われた。16:20から各分科会の報告があり、16:20に閉会した。

 研究発表の題目と発表者については、以下の通りである。

【研究発表(1)】
〈第1会場〉
  ・九成宮醴泉銘における黄金比の存在 / 愛知教育大学院 加藤 眞太朗氏
  ・弘文館を通して見た初唐の書の実相について / 東京学芸大学大学院 徳泉 さち氏
  ・北魏孝文帝の漢化政策と書文化について / 東京学芸大学助教授 橋本 栄一氏
〈第2会場〉
  ・墓誌変遷考 / 新潟大学大学院 坂井 昭彦氏
  ・「伝西行筆」の古筆の享受 ―伝西行筆の書状について― / 広島大学大学院 塩出 智代子氏
  ・亀田鵬齋を中心とする近世文苑 ―良寛との接点など / 新潟大学助教授 岡村 浩氏

【研究発表(2)】
  ・墓誌銘に見られる特殊な数字と処士について / 愛知大学助教授 東 賢司氏
  ・上藍天中の書風について / 尚絅大学助教授 久多見 健氏
  ・楷書の発生 ―東牌楼出土簡牘からみた後漢晩期の楷書書法 / 跡見学園女子大学助教授 横田 恭三氏

 研究発表について私は、愛知教育大学院 加藤眞太朗氏の「九成宮醴泉銘における黄金比の存在」と新潟大学助教授 岡村浩氏の「亀田鵬齋を中心とする近世文苑―良寛との接点など」について、拝聴させていただいた。加藤氏の発表は、美術における絵画の黄金比を手掛かりに、九成宮醴泉銘における点画を構成する要素を分析し、さらに、現代書においても黄金比が存在するのではないかということを示唆するものであった。加藤氏は最後に、「黄金比を用いることで、これまでとは違った観点から、さまざまな可能性を探っていくことができるのではないだろうか。」と提案している。音楽においてもヒット曲における黄金の旋律と呼ばれるものがあるように、人が「美しい」や「心地良い」と感じる黄金の値があることは感覚的に言っても、間違いないであろう。しかし、科学的にアプローチし見解を示すことは、一筋縄にはいかない難しさがあるのではないかと思った。黄金比について興味を持つことのできた時間となった。岡村氏の発表は、鵬齋と新潟との関係、また良寛との合作について研究されたものであった。良寛との接点について数々の逸話が先行している点に注目していた。この岡村氏の発表から、何かを研究する上で、逸話に注目するという点は、研究の意味や価値があるものだと感じた。そもそも、「研究をするということは、どういうことなのか。」という真価のようなものを、自分自身の研究テーマと照らし合わせながら、考えることのできた時間であった。
 また書道学会では、書写書道教育学会と書道学会の開催に合わせて、会員による書作展が開催されていた。さらに、その書作品は一冊の作品集に編成され、配布された。
 平成19年度全国大学書道学会は、秋田県にて開催予定である。