横画の長さの整え方

-楽な整え方と一画強調-

押木秀樹   


 「一画強調をすると、大人っぽくうまく見えると聞きました。一画強調って何ですか?」
 「書写の時間に、一画強調というのを習いましたが、どういう意味があるのですか?」
といった質問をいただきました。

 まず、漢数字の「三」という字と、書道の「書」という字を書いてみて下さい。

 次に、左の「三」と「書」という字を見て下さい。どちらが好きですか?、どちらが好ましく思われますか?

 一方、あなたが書いた字は、どちらのパターンに近いでしょうか?


 まず、好みの問題から見ていきましょう。さまざまなご意見があることと思われます。「どっちでもいいじゃないか!」「どっちがいいの?」って、答えを急がないで下さいね。いえ、先に答えを申しましょう。読みやすければ、どちらでもまったく問題ないだろうと思います。見た目としては。ただし、義務教育の書写の教科書では、(a)のパターンが用いられることが多いのも事実でしょう。

 この(a)のパターンが一画強調です。



 さて、なぜこのようにするのでしょうか?

 どうもこれまで、「一画強調」ということのみが、強調されてきたように思います。少し視点を変えてみましょう。線の長さ(横画)を一本ずつ変えて形を整えるのと、全部同じくらいに書くのと、どちらが整えやすいでしょうか? 

 左の例を見てみて下さい。よく、決して旨くはないが、なんだか読みやすい字を書く人がいませんか。そのような人の字を見てみると、横の線の長さがそろっていて、すっきりまとまっていたりします。下の字と比べてもらえばわかりやすいと思います。そうなんですね。読みやすい字の基本は、「そろえて書く」ということ、この場合は「複数の横画の長さは同じ長さに」ということになります。



 もちろん、そろえなくとも問題は、ありません。左の図のような印刷用字形の場合や、書の専門家の書いた字はそろっていませんが、整って見えるでしょう。印刷用字形は、時間をかけて整えることができます。また、書の専門家は時間をかけて練習しているはずですし、センスも良いことでしょう。

 ですから、センスの良い人や練習時間のある人は、長さをそろえずに整えて書けば良いと思います。でも、普通の人には、より簡単に整えやすい方法を教えた方が親切と言うことになります。「まず横画の長さはそろえる、それだけだとかっこわるいから、一画強調してかっこをつける」というふうに理解すべき問題だと思います。

 さて、みなさんはどちらで書いていたでしょう? 私どもの大学生を対象とした調査では、最初の(b)のパターンで書く人が圧倒的に多く、好みからすると(a)が良いという人が多いという結果がでています。その理由は、明朝体活字の字形がそうなっているからではないかと推測しています。やはり、子供たちの字形の学習においては、書写指導の力より活字の力の方が勝っていると言えるのかも知れません。私は、「子供たちには、より楽に整えられる方法を教えてあげたい」と思うのですが、みなさんはいかがでしょうか?



 まとめておきます。 ということを、私の答えとしておきます。

(1997.06.05 草稿)




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