東京都盲ろう養護学校 第6回書道作品展


書作展を拝見して

書道部門講師 押木秀樹(上越教育大学助教授)
 

上記展覧会のページをぜひともご覧下さい!

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 私は、昨年まで展覧会場にでかけることなく、インターネット展にて拝見していました。インターネットに接続されたパソコンがあれば、出かけることのできない出品者やご家族、また鑑賞したい人たちも助かります。一方、今年私は会場にでかけることで、ご指導に当たられた先生らと直接顔をあわせお話しすることができ、それはまたそれで大切なことだと感じました。加えて、作品も直接見ることにより、一人一人が筆を動かしたその息づかいを感じられるように思いました。書作品という特性からも、できることなら直接見ることが望ましい。しかし見ないよりはインターネットを使ってでも、見る方が何倍もすばらしいと思うのです。それでは、見せてもらった感想を書きたいと思います。

 出品者の中には、今年初めて出品する人と何度目かになる人がいるかと思います。新しく出してくれた人の作品を見ることもうれしいことです。そして、昨年見たあの人の作品、今年はどうだろうというという気持ちで見ることも、とても楽しみです。なぜ楽しいのでしょうか。一つは、あれ?っと思うと、昨年も見た人の作品だったりすることです。一人一人個性があって、今年もあの子があの子らしく書いているなあ、と感じるのは楽しいことです。個性は大事だと思います。次に、昨年と今年をくらべて、一人一人の向上がわかることです。努力や工夫が感じられると、うれしく思います。そして、書は一生の趣味だと思います。学校の仕組みから毎年、チャレンジすることができたりできなかったりすると思いますが、何らかの形で続けていてもらえると、さらにうれしいです。卒業しても、続けてくれると良いですね。そんな視点で、何人かの作品を見てみました。

 次に、何のために筆を持って字を書くのか少し考えてみたいと思います。たとえば、次のように考えることができます。

  1. 読みやすい字を書けるようになるため   人に読んでもらう
  2. 楽しい(すばらしい)作品を書くため   人に見てもらう
  3. 書くこと自体の楽しみ          自分が楽しい

 出品者の皆さんや先生には、それぞれの目標があるだろうと思います。読みやすい字を書くためには、

  1. 字の形
  2. 全体の配置(字の大きさなど)
  3. 漢字やかなのバランス・字数行数

を特に勉強する必要があります。また見て楽しい(すばらしい)作品を書くためには、それに加えて、

  1. 墨色・潤渇
  2. その他の雰囲気や工夫

も工夫すると、良くなるはずです。まず、読みやすい字ということから、何点かの作品を見てみることにします。

 その他、いろいろな工夫が感じられました。手作りの印、牛乳を使った作品、立体コピーによる表現などです。なお、すべての作品について触れることができず残念です。

 さて、整った字・見て楽しい作品について、触れました。そして、私は、出品しているすべての人にとって、書くことそれ自体が楽しい、というのが一番大事なことなのかも知れないと思っています。うまく書けるとうれしいですか、うまく書けたねっていわれるとうれしいですか。わからないという人もいるかも知れません。それぞれが、それぞれの楽しみとして、続けていってもらえることを祈ります。


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