Back

書の鑑賞者の問題(第二十八回展に寄せて)

顧問 押木秀樹

 金沢大学書道部学外展にご来場いただきまして御礼申し上げます。

 書道部を卒業していく学生は、今後筆を持ち続けてくれるだろうか、またせめて書の展覧会に足を運んでくれるだろうか。書の展覧会に来て下さる人は、筆に親しんでいる人ばかりだという。書は自分でやってみないとわからない芸術だとか、他の展覧会に比べて作品に差が見られないためだなどの意見も聞かれる。

 以前、まったく書に関心のない友人と都内で書の展覧会を五つほど梯子したことがある。見終わって友人につまらなかったのではないかと詫びると、彼は五つの展覧会の内二つは「なんだか、いいなあ」と感じたという。実は、私も同様に感じていたのである。筆を持っていない人でも、書展の善し悪しはわかるのではないかと思う。はたして、食わず嫌いか。それとも、見応えのある書展が少ないということか。

 そのことを思うと、我が書道部の展覧会は決して見応えのあるものとはいえない。在学生の諸君には作品が未熟であれば、せめて若々しいセンスを作品や展示方法に見せる工夫をして欲しい。そしてご来場の皆様、鑑賞というには恥ずかしい作品かとは思いますが、どうかきびしいご叱正と励ましをお願い申し上げます。