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単純なものに

「白い紙に黒い線が引いてある」
 もっとも単純に書の作品を説明すればこうなるだろうか。そんな単純なものなのに、作る側は情熱を燃やし、見る側は感銘を受けたり首をひねったりする。実に妙なものである。この科学技術の発達した二十世紀も終わりに、こんな単純なものが、不思議と人に訴えかけてくる理由は明らかにされていない。

 金沢大学書道部の学生たちは、あるものは人文科学をまなび、あるものは自然科学を学んでいる。経済の仕組みを知ろうとしている学生や、コンピューターに向かっている学生も、この単純で不可思議な「書」の世界で、なぜ・どうしてという次元を離れて、取り組んでいる。それは未熟なものかもしれないが、さまざまな分野に取り組む学生たちの「書」をご覧きたくお願い申しあげます。