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筆をとる意味

 書きあがった自分の作品を見て芸術とはほど遠いことに気付くとき、山のようになった反故紙を見るとき、いったい何のために筆をとるのかと思う。何の役にも立たぬことをなぜするのかと悩む。またある時は、無心で筆をとりひたすら書き続けるだけで、そこに理由などない。ただただ書き続けるだけである。

 日常、直接的な成果を意図した行為が多い中、筆をとることはその日常の感覚では割り切れないことかもしれない。特に学生時代、井上靖「北の海」ではないが、日常から離れて無心に筆をとる時間も大切であろう。また逆に、なぜ筆をとるのか悩むことも大切であろう。そのいずれもとても重要なことのように感じる。

 書きあがった作品が人さまに見ていただける物かどうかはわからない。しかし、ある者は無心にある者は悩みながら、作りあげた「書」であることにかわりない。ご来場の皆様のご高覧とご叱正とをお願い申し上げます。