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本当に良いもの(第30回展に寄せて)

旧顧問 押木秀樹

 金沢大学書道部学外展にご来場いただきまして御礼申し上げます。本展も三十回を数えるに至り、これまで書道部に関係した者の一人として、支え励まして下さいました皆様に感謝申し上げます。

 三十年前と今とでは社会もずいぶん変わり、特に近年はその変化が激しいように思います。たとえば、最近ではコンピュータにより処理を施した書作品をみるまでになりました。私なども、その是非をたずねられることがあります。筆・墨・紙という限られたものにより、微妙な表現をするのが「書」ではないかと。この問いに対し適切な答えは浮かびませんが、用具が変わってもそれが本当に良いものであれば認められるのではないかと思います。そして、その結果は歴史が教えてくれるのではないでしょうか。

 残念ながら、学生らはまだまだ書の学習をスタートしたばかりであり、今回の展覧会の作品が時代を超えて残っていくとは思えません。一方、学生諸君は、多くの作品を見ることで本当に良いものとは何かを考え、歴史というフィルタを通して残されてきた本当に良いものを学んで欲しいと思います。そして、書と長くつきあっていく中で、本当に良いものが生み出せることを祈ります。

 ご来場の皆様、どうかきびしいご叱正と励ましをお願い申し上げます。