書写の学習とフェルトペン Date: 2006-08-10 (Thu) 
 フェルトペンを書写の学習活動で用いる理由として、先に以下の3点をあげておきたいと思います。

a.効果的な学習用具として
b.効果的に学習内容・教材を示すため
c.多様な筆記用具の特性を理解し、生かして書くため

 次に、フェルトペンの特徴について、次のように考えます。

1.水性・油性などの種類により、耐水性等も含め日常において
 比較的よく用いられる筆記具である。
2.太さの種類により、文字の多様な大きさに対応でき、さまざまな
 場面で用いられる筆記具である。
3.フェルト部の形状により、紙に接する際の形状が斜め45度の
 水滴状となり、(これが毛筆による楷書/行書等の書字において
 紙に接する際の形状に近いことから)、はね・払い等の日本語
 の文字の点画を表現するのに適している。また、書字を続けて
 も(鉛筆等に比べ摩耗が極めて少ないため)接地面の形状の変化が
 少なく、軸を回転しても同様であること。
4.鉛筆・ボールペンといった用具で書かれた中で使用することで、
 書き上がりの見た目が異なるため、教材・教科書などにおいて、
 文字を目立たせることができる。

以上の上で、学習時の使用を考えてみます。

 まず、子どもたちが日常使用する筆記具は鉛筆ですが、持ち物などへの記名をはじめとして、フェルトペンを用いる機会は少なくないはずです。「目的や必要に応じて…」書く能力の育成を考えると、目的や場面に応じた筆記具の選択も重要ですし、その使用方法を学習しておくことが、書写として意味のあることです。これが、フェルトペンを書写の学習で用いる理由としてのcと1・2ということになります。

 次に、漢字・かなの字形的な特性や書字運動としての特性を理解して書くという点から、毛筆は意味があると思います。一方、学校教育では学習指導要領により、毛筆の使用は小学校3年生からということになっていますし、準備・片づけの手間やその使いこなしにも難しいものがあります。その点、フェルトペンは、手間と使いこなしは容易であり、毛筆に近い、上記3の特徴を持っています。「a.効果的な学習用具として」の学習活動におけるフェルトペンの使用は、この効果をねらってのことといえるでしょう。硬毛ペンといったものも市販されていますが、これもフェルトペンの一種であり、この効果を期待したものと考えられます。

 最後に、教科書や先生方が作成される教材の文字が、フェルトペンで書かれているということもあろうと思います。この意図として、おおまかに2点が考えられます。 
 一つめは、フェルトペンの特徴の3として示したとおり、フェルトペンを用いると、はねやはらい等の文字を構成する要素が表現しやすいことから、学習内容を示しやすいという点があります。仮に、児童は鉛筆で練習するとしても、教材として示す文字にはフェルトペンを用いておくということがあり得ます。
 二つめは、2に示したとおり、大きく・太く示すことができることから、文字を強調して示すことができるという点です。手本として横において練習するというだけではなく、示した文字の上を指でなぞるといった学習活動を想定した場合などに、鉛筆ではなく、フェルトペンで教材となる文字を示すこともあるでしょう。また、単に児童が手本として見るのではなく、学習内容を理解する教材として文字を示す場合などにも、その文字をフェルトペンで示すと効果的かと思います。

 教科書・教材としての提示にフェルトペンを用いるのは、教師など教える側の問題ですが、効果的に示し、またその意図が子どもたちに伝わるよう指導することが肝心ではないでしょうか。
 一方、子どもたちが学習用具として用いる場合、もしかしたら鉛筆でないというめずらしさがあるかも知れません。その効果も、あってよいことだと思います。ただ、それに加えて、基礎的な学習における学習効果をねらったものなのか、それとも日常に生かすという点での使用なのか、教師の側ではしっかり意図をもっておきたいものだと思います。

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