毛筆の字と硬筆の字(学習要素の差について) Date: 2004-05-05 
お子さんの字について、
  中学卒業まで書道を習っていて、筆ではそこそこの字を
  書けるようになったものの、ノートに書いてある字はお
  世辞にも上手とは言えない。毛筆と硬筆は違うものだとは
  聞くのですが、落差が大きくて不思議に思います。

という質問をいただきました。確かに良く聞かれることであり、
私自身気になる点です。現時点で考えられることを、メモ書きして
おきます。

整った字を書くための学習としては、おおざっぱに、
a.整った字形をイメージできる視覚的な学習(記憶)
b.動作として実現できる運動的な学習(記憶)
の二点にわけて考えることができそうです。
※イメージできなくても、手を動かせば書けるという運動的な
 字形の記憶もあり得ると考えられます。

aの視覚的な学習、すなわち整った字形とはどういう字形かという学習
は、毛筆でも硬筆でもそれほど変わらないと思います。応用が効く部分
ともいえるでしょう。一方、bの運動的な学習の部分は、主に腕を使う
毛筆の運動と、主に指を使う硬筆の運動とは、かなり違うと考えられます。
もちろん、運動についても、ある程度は硬毛で関係するのではないかと
思いますが。

毛筆で上手に書けても、硬筆でうまく書けない場合、aの視覚的な学習は
でき、毛筆の動きとして実現できても、主に指を使う硬筆の動きとし
て実現できないことがありえます。この場合、理論的には、指などの
コントールができるようになれば、毛筆で学習した力を生かすことが
できるだろうと思います。現実的には、筆記具の持ち方や慣れた
運動パターンなどの関係で、動かしやすいい方向・動かしにくい方向
(ある線の方向)ができていたりするため、頭で考えるほど簡単では
ないかも知れません。

もう一つ、指導方法などの問題として、毛筆で字を習って硬筆が向上するか
どうかについては、次のような問題があるように思います。

・毛筆学習の際に、横に置いたいわゆるお手本そっくりに書く力を
 養ったのか、それとも(その過程をへて)お手本に近い字形(を記憶し)
 で書ける力自身の字を向上させたか。

という問題があります。コンクールなどで賞を取ることなどだけを
意識した毛筆学習ですと、横にあるものとそっくりに書く力はついて
も、手本がないときはさっぱり書けないということもあり得そうです。
たいていは、無意識にもある程度字形の学習ができていると思いますが、
意図的に手本がなくても書けるように工夫した指導と、そうでない指導
とでは、効果も違うだろうと思います。

ちなみに、そっくりに書けるためには、横にあるものを認識する力と、
再現するだけの毛筆を使う技能は育っていると考えられます。記憶が
形成されるかどうかと、他の文字などの応用できるかどうかという点
が問題になると思います。

では、どうしたらよいかというと、、、これからというところですが、
現時点において考えられるところで書かせていただきました。


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