<パソコンとインターネットで広がる書の世界> 第2回

インターネットにのった書作品


はじめに


 電子メールそして普通の手紙で、ご意見やご感想をいただき本当にうれしく思います。その中でご質問をいただきました。「インターネット上で編集を進める新しいスタイル」とは、どういうことですか?、です。そうですね。基本的には、電子メール、インターネットの場合はe-mailということが多いのですが、それを用いて私の原案に対し編集の人がコメントし、それを元に私が書いた原稿を編集部で手直しするといった形です。え、それでは、普通にfaxや郵便でやっていることと同じではないかって、、、しかも、電子メールでは文字しか送ることができないから、faxと違って見たままをやりとりすることができないでしょ、、て。いいえ、e-mail では、画像をやりとりすることもできるのです。実はそれ以上に便利な方法を使っていますが、それはまたの機会にお話ししましょう。

 今回のお話は、パソコンで画像のやりとりができることになったことと大いに関係します。以前パソコンは、「文字」しか扱うことができませんでした。書だって文字ですよね。でも、この場合の文字は前回少しだけふれた「3D71というコードである」というやつなのです。これでは、コンピュータもインターネットも、書道だけではなく、手で文字を書くことにとって大敵といってもよかったかも知れません。それが一挙に味方になったのは、インターネットのWWW(ウェブ=蜘蛛の糸)というやつなのです。


見たいところを選ぶ

 前回の最後に、マウスをクリックしました。どんな画面があらわれたでしょう。パソコンの画面は、右の図のように変わりました。もう日本、いえ世界のインターネット書道展示室の扉がそこにあるのです。それでは、1番のハミルアキというところをクリックしてみましょう。



作品展示スタート

 クリックして見えてくるのが、右のようなページになります。今でこそ、書に関するインターネットのページはたくさんありますが、当初他の芸術分野に比べて、書のページはきわめて少なかったのです。その中で、書以外の美術団体に属している人たちの作品がインターネットに展示されるようになってきました。このハミルアキさんの作品も、その一つといえるでしょう。



一般ギャラリーのオープン

 もっと伝統的なものを見たいですか、もちろんあります。書道のページを作り始めたのは、「パソコンに詳しく、書道もやっています」という感じの人が多かったかと思います。その中で、かなり本格的に書道を学んだ人のページが登場します。2番目をクリックするとあらわれる、右の五十嵐康子さんのページがそれです。五十嵐さんは旧姓増井さんといい東京学芸大学の書道科で勉強された方です。何とも運が良かったのは、新婚の増井さんのご主人は、高校の先生で、パソコン関係の多くのコンクールで入賞されるなど、プロ顔負けの方だったのです。増井さんのページには、この作品の他たくさん展示されています。そして、個人展示をしているページは、次々と増え続けています。



国際化・そして書いてる場面が見える!

 さて、そうこうする中で、いくつかの変わり種のページもできてきます。すでに『墨』で紹介済みの「インターネット書道教室」もその一つです。3番目をクリックすると見ることのできる信州大学 北澤真弓さん の ページ もその一つです。え?、英語で書いてあるだけで、逆に地味な印象を受けるだけですって。こればっかりは、本では紹介できません。実は、下の写真の部分、今まさに書こうとする写真をマウスでクリックしてみます。そうすると、この写真は動き出して、「夢」という字を書き上げてしまうのです。実は、北澤さんは大学で情報処理を専門にする学生さんで、このページもかなり早い時期に作られていました! 海外の方にも、実際に書いている姿を知ってもらおうとする北澤さんの気持ちが表れたページです。



巨匠の作品だって

 しばらく前に、ちょっと変わった名前のページができました。その名も「信州木曽路、書とアウトドア」というものです。4番目をクリックすると見ることができます。作ったのは、上條信山氏のもとで書を学ぶ(現在では過去形になりました)永島玄谷先生です。永島先生は、長野県の木曽で社会福祉のお仕事をしつつ、趣味のアウトドアと本職ともいえる書をなさるアクティブな方です。そのアクティブさで、決して仕事やそれまでの経歴とは直結しないホームページまで作ってしまわれたのかも知れません。  さて、永島先生のページには、先生の師匠の上條信山先生の作品を始め、日展作家の作品が展示されています。いよいよ、プロの書家の作品の登場というわけです。現在、『墨』ですでに紹介された「呉竹精昇堂」のページなどプロの作家のギャラリーも増えつつあります。



本格的な展覧会情報も

 さてさて、作品は実物を見なくては、とおっしゃられる方には、これまで紹介してきたものではご満足いただけなかったでしょう? 実際の展覧会情報は、どうなっているでしょうか。左に載せたものは、「国際架橋書展」のページです。今年度の展覧会の期日・会場から募集要項、またこれまでの受賞作品まで見ることができます。

 次のものは、どなたもご存じの故西川寧先生の作品ですね。実はこれは、平成9年1月に銀座松屋で開催された「日展90年記念展」の案内の中から、書の部分を抜き出したものです。お出かけかどうか迷ったときなど、どんな作品が展示されているのかわかれば、便利ですよね!



書の総合情報ページも

 最後にこのページをご紹介しましょう。どうですか、迫力もセンスも見事ではありませんか!しかし、私がお話ししたいのは、それとは別のことです。図の左下にある部分は、書に関する部分のメニュー・目次に当たる部分です。 なんと、その内容を列挙すると、書に関する書籍・他の書のページへのリンク・書について考え・書の古典・用語解説・字源のこと・書の名言集・文房四宝・作品・篆刻ときわめて多岐にわたっています。ちょっとした知識が必要な場合など、このページを開けばすぐわかるといった感じさえします。そうです、書の総合情報発信基地というタイプのページの登場です。先に『墨』に掲載された私どものページもカラーが違うとはいえ、このタイプに属します。中国の書に関する美術館情報などもある奈良教育大学の松本研究室のページなどもできつつあり、このタイプも増えていくことと思います。



 これらの総合的なページは、もちろん無料で公開されていますし、大変便利です。しかし、個人でしかも無料で運営していく以上、そこには限界があります。なにか良い手はないでしょうか? さて、次回は「イメージで開ける書のパーチャルミュージアムの扉」と題して、この総合型インターネットページ以上の情報量をパソコンで考えてみたいと思います。

インターネット同時掲載中!

 本稿は、『墨』発売と同時にインターネット上でも見ることができます。ネットスケープもしくは、エクスプローラ等に、[http://www.ed.kanazawa-u.ac.jp/~oshiki/sumi]と入れてください。また、ご意見ご感想は、e-mail : oshiki@juen.ac.jp (著者)もしくは coggie@***.***.** (編集)にお寄せください。次回以降に反映できるかもしれません!