<パソコンとインターネットで広がる書の世界> 第1回
パソコンでできるあんなこと、こんなこと
はじめに
今回から6回にわたり「パソコンとインターネットで広がる書の世界」をご案内させていただきます。私は、書道担当の大学教官をしています。手書き文字の研究をやっていることから、ちょっとコンピュータにも詳しいというところでしょうか。さて、昔のパソコンの本は、わけの分からないことばかり書いてありました。たとえば、「書という字は3D71というコードである」とか。一体、こんな知識を誰が必要とするのでしょう? それが変わってきたのは、GUI・バーチャルリアリティといったことの登場によるのです。あ、「結局わけがわからない!」ですか? そうなのです。パソコンはずいぶん使いやすくなりましたが、パソコンの本は頭の痛くなるようなことばっかり書いてあるのです。だから、本を読む前に、誰かが使っているところを見る方がずっとお薦めなのです。たとえば、パソコンではない日常生活を考えてみたら、「雑誌の読み方」とか「写真の見方」などを本で勉強した人はいないはずなのです。
しかし、困ったことに『墨』は本なのですね。仕方がありません。皆さんの前にパソコンがあるつもりになって、一緒に写真や図版をご覧いただくことにいたしましょう。わからない部分は、読まずに見るのです。さあ、「パソコンとインターネットで広がる書の世界」にでかけましょう。
どんな世界が広がるの?
今回は予告編ということで、パソコンを使って「どんな世界が広がるのか?」、そして「どんな画面を見ることになるのか?」ということをお話しておいた方がよいですね。これはそのまま連載の概略となります。
インターネットにのった書作品
まずは、家にいながら展覧会を見ることが出来たら便利だと思いませんか? えっ、作品は直に見ないとダメですか。また出掛けることに意義があるというかたもいらっしゃるかも知れません。だとすれば、『墨』の展覧会情報のページのように、展覧会の概略がわかるだけでも便利でしょう。特に私の場合もそうですが、地方に住むものにとってはこの上なく便利なはずです。逆に地方の展覧会を他の地域の人に紹介し見てもらうのは至難の業です。こんな時に便利なのがインターネットのWWW、『墨』でもおなじみのあれです。次回はこれについて見てみましょう!
書のバーチャルミュージアム
次に、先生から「黄山谷の草書をぜひ参考にしなさい」と言われたらどうしましょう? 黄山谷の草書を探すには、まず書道用語辞典を引きます。代表作は「李太白憶旧遊詩巻」でした。さあそれから、図版を探します。さがしてさがして、ありました、墨スペシャルの第9号『中国書道史』にきれいな図版が載っています。しかもこの作品は日本にあるではありませんか。美術館もわかりましたが、この美術館、いったいどこにあるのでしょう? またまた探して、同第16号『書のある美術館めぐり』に載っている京都の美術館でした。さて、京都のガイドブックを買って……と、楽しい作業ではありますが、もう一日終わってしまったなどということもありそうです。では、これがパソコンでできたらどんなに便利でしょう。第二回は少し未来の展望も兼ねて、このことについて見てみましょう。
作品制作の道具にコンピューターを活用しよう
美術館に足を運び、黄山谷の実物を見て感激しましたが、今度は先生から「黄山谷を参考にして作品を書いてみなさい」と言われました。書道字典を何度も何度も引いて、「ああ無い字はどうしましょう?」ということも良くあります。そして、字典をコピーして切り貼りして、ようやく作品の雛形ができました。でもちょっとアンバランスだったりします。何かいい方法はないものか……。実はこの作業をすでにパソコンでやっている人たちがいるのです。第三回はこの話をさせてもらいます。
作品の管理はコンピュータで
ある日、近所の人から「作品を見せて!」と言われました。漢字仮名交じりがご所望の様子、3年くらい前の展覧会に出したお気に入りの作品を見てもらいたいとします。あれなら、押入の中にあるはず……、ところがなかなか見つかりません。どうもおかしいと思ったら、書いた年も作品のサイズも違っていたなんてこともあるんじゃないでしょうか? そんな時、パソコンで作品の管理をしたらどうでしょう。また塾や競書誌の作品管理をパソコンでやるというのも考えられます。ということで、第四回はデータベースによる作品の管理についてお話ししましょう。
テレビ電話で書の添削指導を
その次は、少し未来予想ということで、パソコンを使った書の通信添削を考えてみましょう。郵便だと書いてから、封筒に入れて送り届くまで数日、添削が終わって届く頃には書いたときの苦労も忘れてしまっているなんてこともあるでしょう。パソコンを使えばどうでしょうか。これだけのためにパソコンを買うのはもったいないですか? それでは将来、テレビ電話で先生の書くところや直してくれるところを見たり、自分の書いたところを先生に見てもらえるとしたらどうでしょう? 第五回はこんな話もしてみたいと思います。
とりあえず、予告編はこのくらいにいたしましょう。期待が大きすぎてもいけませんからね。それと、何といってもパソコンの世界は変化が早いもの。ですから各回の内容が変わったり、話が前後するかもしれません。
さて、パソコンの操作で知っておいて欲しいことが一つ。「マウスでクリック」ということです。本を開き、目次や索引を見てそのページを開くという動作がありますが、パソコンの場合、本より簡単なのは、目次や索引を指で押すと自動的にそのページが開くことです。これが「マウスでクリック」なのです。これだけ覚えたら、パソコンと書の世界に入っていきましょう。
今回の最後に、うちのインターネットのホームページから図の→の部分をクリックします。さて、どんな画面があらわれるか、請うご期待ということで!!
インターネット同時掲載中!
本稿は『墨』発売と同時にインターネット上でも見ることができます。ネットス
ケープもしくはエクスプローラなどのホームページ閲覧ソフトに[http://www.ed.ka
nazawa-u.ac.jp/~oshiki/sumi]と入れてください。また、ご意見ご感想は、e-mail : oshiki@juen.ac.jp (著者)もしくは coggie@***.***,** (編集)にお寄せください。次回以降に反映できるかもしれません!
なお、この連載自体も、インターネット上のホームページや電子メールを介して原
稿や図版のやりとりをし、執筆者と編集者が共同で作業を進める 新しいスタイルで
制作されたものです。
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