蔵鋒と中鋒についておしえていただけるでしょうか?

 このような質問をいただきました。蔵鋒と中鋒、、ことばで説明するのはとても難しいですね。私なりの答えを考えてみました。以下、ほぼそのままの表現を掲載してみます。ご覧の方で、アドバイスをいただけましたら幸いです!!

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> 蔵鋒と中鋒についておしえていただけるでしょうか?
> 実は私、独学で篆書を始め参考書を読んでます。

この参考書が何かがわからないこともあり、とりあえずということになり
ますが、私の書ける範囲で書かせていただきます。難しい方の答えを
ご希望だとすると、ここは私の専門を越える内容となってしまうのです。

私は、
	中西啓爾『中国書道辞典』/木耳社

の説明が適切だと思います。

 蔵鋒
	 用筆法の一、露鋒に対していう。諸説必ずしも一致しないが、
	多くは鋒即ち筆尖を画中に包み、外にあらわさぬをいうようである。
	特に起筆や終筆に穂先の鋭さを表さないことを必要とし、筆を下す
	とき、一たん穂先を逆の方向から入れて、正常の方向に直せば
	穂先の鋭さはかくれて、沈潜した一種特別の風体が生まれる。(以下略)
 中鋒説
	 運筆法の一。これが解説に二種ある。
	1.筆の穂先が常に点画の中央を通るべしとすること、かくすれば
	 筆力沈潜して趣到深きものとなる、という説。(以下略)
	2.楊守敬は前説に反対し、画の中央を常に穂先が通ることは変化を
	 与えないことになる。穂先を中正に持っておれば、八面に穂先が
	 時に応じて出ることができて変化ある筆法となる。(以下略)

とあります。基本的には、篆書や隷書の筆法であり、行草書の用筆にも
近い動きが見られるが(たとえば懐素・自叙帖など)、楷書などにおいて
も、清朝碑学派の一部が風趣を求めてこの用筆を用いている方が有名だという
ことになりそうです。

具体的は、
	穂先を逆の方向から入れることにより、起筆部に穂先の形が表れない
	ように書き始め(蔵鋒)、送筆部において基本的には穂先が線の
	中央部を通るに進める(中鋒)
という解釈が一般的かと思います。

なお、特に起筆については、単に穂先を隠すというだけではなく、そのことに
より筆の弾力を生かした線を表現できるという意図もあるだろうと思います。

本来は、筆の動かし方・使い方の問題であり、「中鋒・蔵鋒」というのはそれに
つけたラベルであると思います。その意味では、独習の場合、ビデオなどで見る
ことが一番ではないかと思います。ただ、文章よりは図を使った説明の方が
わかりやすいはずで、
	西川寧編『書道講座 5 篆書』/二玄社
の、p.9あたりの図入りの説明がわかりやすいと思います。この本は、割と
図書館などにも入っているようです。

以上、わかる範囲で書かせていただきました。やはり、どうして
も文章では表現しきれないような感じが残りますが、とりあえず、
これにて送らせていただきます。