楷書の字形分析研究の方法について

−書写書道教育の基礎学として−

上越教育大学大学院  押 木 秀 樹

 

1.字形分析の必要性と本研究の目的

 書道研究・書写書道教育研究における書字過程や字形に関する研究は、これまで、勘や経験を頼りにした主観的方法で行われてきた。しかし近年、科学的な研究法の必要性が説かれるようになってきている。たとえば、久米公(注1)は、書写・書道科教育学の確立と、その基礎となる「書道学」「書学」の確立の必要性について述べ、その際の問題点のひとつとして、科学的研究法の欠如をあげている。必要性が説かれるばかりでなく、書字過程に関する研究では、筆速と筆圧・握圧の測定により書字過程を客観化し、科学的な研究を行っている。(注2

 これに対し、字形に関する研究は、科学的な研究法の導入が極めて遅れており、主観的な方法が行われているに過ぎないと言ってよい。以下いくつかの例から、客観的な字形研究の必要性について考察する。

 字形の比較を行う際や、書跡の系統化・分類の一要素として、字形を客観的に分析することは、不可欠であると考える。たとえば、書写書道教育の分野では、指導法の研究において、指導の前後の字形の変化を測定することがある。このような実験研究の場合、実験計画に見合った学習結果等の測定が必要であると考える。また、実験者ごとに能力の表現法が異なっていたのでは、それぞれの研究を比較して検討することもできない。字形の特徴を客観的に比較可能なものとして取り出すことが必要である。

 マンガ文字の問題、活字の多様化とその影響の問題、横書きに適した字形の問題などが最近とりあげられている。たとえば、活字に関しては、かなり以前から横組みの字形に関する研究(注3)がすすめられており、字形の特徴を数値として抽出することによる研究(注4)も行われている。書写書道教育の分野においても、これらの字形の研究、とくに比較研究は必要であると考えられる。比較研究を行う際に、これまでの主観的な方法では、限界があるのではないかと考える。

 さらに、評価の際に、主観的評価は必要であるが、誤差のない測定的な評価を行う、もしくは誤差のない評価基準を作成するといった場合、客観的な方法が不可欠であると考える。将来的には、書写指導に習熱していない教師の補助として、教室のパソコンにより、診断的な評価を行うといったことを考えると、その基礎として字形の客観化は必要であろう。

 純粋な書道の研究においても、同様に考えられる。たとえば、古典書跡の系統化や分類において、字形をその一要素とすることがある。他者と同一問題を検討する際、共通の基準を定めておくことが望ましいが、要素としての字形を客観的なものにしておくことにより、それが可能になる。また、字形を科学的に客観化することができれば、筆跡鑑定の際の再現性が保証される。

 もともと字形は人間が感じるものであるから、勘や経験による主観的な方法も重要であると考える。しかし、感じ方は個々に異なるものであるから、以上述べてきたような研究や評価・測定の場面においては、科学的な方法が必要となる。そのためには字形の特徴を客観的に抽出する分析法が不可欠であり、しかも再現性のあるものでなければならない。

 このような字形分析の必要性から、楷書を対象として、字形を客観的な数値として表現することを課題として設定した。本研究では、字形の分析に必要な考え方を明らかにし、コンピューターによる文字認識の技術を用いて、字形を数値として抽出する一方法の可能性について検討する。なお、分析対象とする書体を楷書に限ったが、これは一字一字の区別、画と画との区別が明確にできる文字に限定したからであり、この条件に当てはまるものであれば、簑書・隷書・および仮名なども原理的に適応可能である。

 

2. 分析の基本的考え方

 この分野においては、これまで字形を分析的にみた例が乏しく、分析にあたっての基礎的な考え方が必要となる。まず、字形の差異が生じる原因として、次の三つの差異をあげた。

  ○個人内差異(筆記条件や筆記の時期によって生じる)

 字種間差異は、文字を見て、概念や音訓を想起するために必要なものであり、たとえば「シ」と「ツ」では、特に第一画目と第二画日の角度がその大きな差異である。これらのことは、字体として我々の頭のなかに入っているわけであるが、同一字種であっても字形として表現される際には、人により多様な表現がなされ、また同一人物であってもまったく同じ形の字を書いているわけではない。こう考えたときの、筆記者ごとの差異を個人間差異、同一筆記者のその時々の差異を個人内差異とした。

 機械処理による文字認識・法科学の分野での筆跡鑑定は、こういった差異の存在を研究の基盤として、明確にしている。書道・書写書道教育研究の分野における字形研究においても、三つの差異をおさえておく必要がある。実際、直接的に扱うのは個人間差異と個人内差異である。具体的には、一人の児童生徒の学習の前後の字形の差異や、書家の生涯の字形の変化などは、おもに個人内差異を問題にする。また、古典作品の分類・系統化などにおいては、個人間差異が問題となる。しかし、いずれの場合も、問題となる差異だけがわかれば良いというわけではない。たとえば、一個人の児童生徒の字形の変化を見る場合でも、その変化が他の児童生徒のなかでどのように位置づけられるのかといったことも把握しておく必要がある。さらに、個人内差異でも、学習の前後の差異や生涯のなかでの差異などだけでなく、同時点における筆記用具や心理状態、意図的な変化などによる差異も考慮していかなくてはならない。

 字種による差異は本研究の目的とは直接関係しないのであるが、字形を分析する際の特徴には、字種に依存するものとしないのもとがあることから、人子種による差異も考慮する必要がある。特定の字種に限って比較可能な特徴、異字種間の比較はできないが字種が異なっても同様に抽出できる特徴、異字種問の比較が可能な特徴などを、明確にしていかなくてはならない.。このように、字種に依存するものとそうでないものとを区別する必要から、字種による差異について考慮しなくてはいけない。

 字形を分析していく際には、以上のように差異の生じる要因を明確にしておく必要

がある。

 さらに、基礎的な考え方として、字形を分析的に見る際の、特徴の分類が必要であると考える。古くからの字形の論である「欧陽率更三十六法」などの間架結構法は、注意すべき点を列挙したのみで、煩雑であることが問題とされてきた。これに対し、現代の字形の論(注5)は、整理され、いくつかの原理・原則による分類のもと、細かい説明を行っている。これらの分類は、芸術的な書を指導・学習する際に用いる場合、有効な配列であると考えられる。しかし、基礎的なことから応用的なことへの配列であること、もしくは字形の特徴を包括していないことから、分析的にみる際には不適切である。字形を分析する際の特徴の分類として、本研究では次のTからIIIのレベルを設定することを提案する。

  T、文字全体の特徴(文字の大きさ、重心・中心、文字の平均的な太さなど)

  II、文字の構成部分の関わり方に注目した特徴(へんとつくりの関係など)

  III、文字の構成要素の特徴(画の角度や長さ・画と画の関係など)

 ここでいう文字全体の特徴とは、一字全体から得られる特徴をさす。次の構成部分とは、基本的には扁・旁・冠・垂れなどの部首をさす。ただし、かならずしも部首という分類に入らない構成部分、たとえば、「樹」の「壷」なども含むことから、構成部分ということばを用いた。IIのレベルでは、これらの構成部分の特徴を扱い、おもに各構成部分間の関わり方を観占州とする。IIIの構成要素とは、基本的に点画をさす。ただし、画を意味する場合と、折れ・はねなどを含まないストロークを意味する場合を考慮し、構成要素という言葉を用いた。IIは、構成要素の単位での分析から得られる特徴である。一つの画もしくはストローク (以下同様)自体の特徴、および画と画の関係について扱う。

 この三つのレベルによる上位分類を行ったのは、さらに次のような理由がある。字形の複数の特徴は、それぞれ関連をもっていると考えられる。科学的な字形研究の課題として、この関連の仕方を、明らかにしていく必要がある。ここで示したレベル間の特徴も、関連しあっていると考えられる。特にTは、IIIIIの要素から規定されるであろう。このようにレベルを設定したのは、複数の特徴を因果関係とでもいうべき関連の仕方で捉えていくのに適していると考えたためである。

 なお、この三つのレベルそれぞれに、分析のための具体的な観点を設ける。この観点の例を、各レベルの括弧内に示した。さらに、その観点を数値として表現するために、複数の特性値を定義する。この特性値は、一度定義し、プログラミングしておけば、汎用できるものである。具体的には、後の分析例において、例をあげる。

 

3、分析方法

 これまで、この分野で字形を数値として客観化したわずかな研究は、何れも手計測による数値化であった。手計測による方法の二つの問題、一つは太さをもった文字から測定点を定める際の誤差の問題であり、もう一つは、測定に時間がかかることであるが、これを解消するために、機械処理による文字認識の技術を用い、コンピューターにより、文字をデジタル化して処理する方法を取る。

 デジタル化の原理を具体的に説明すると、文字の上に細かい方眼紙をのせ、文字部分のますめとそうでない部分のますめとを何らかの基準で判断する。こうして、連続した面を点の集合で近似的に表現することにより、それぞれのますめに座標を設定することができ、客観化が可能になる。

 このデジタル化の考え方は、現在のコンピューターの性質に合うものであり、コンピューターによる画像処理においては、デジタル処理がなされている。文字は、コンピューターにおいて、一つのパターンとして二次元の配列でイメージどおりに扱うことができる。しかも、計測にかかる時間は、手計測とくらべ、速いことは言うまでもない。以上が、コンピューターによる画像処理の一分野である文字認識の技術を用いる理由である。

 実際には、コンピューターを用いて、次の過程から分析を行う。

 観測過程………分析する文字の字形を観測装置により電気信号にかえ、コンピュ

         ーターヘ入力する。

 前処理過程……コンピューターに入力された文字パターンから、紙面の汚れなど

        のノイズを除去し、複数の対象文字の諸条件を一定にし、分析に

        不必要なデータを落として分析に適したパターンに変換する。

 特徴抽出過程…これまで主観的に述べられてきた字形の特徴を、数値として表現

        する特性値を定義し、その特徴を抽出する。

 本研究では、これらの過程において、文字認識・筆者認識のための個人性を研究した吉村の処理方法(注6)を基盤として用いた。具体的には、細線化・折れ線近似などの処理を行い、次の三つの文字パターンから、コンピューターを用いて特徴を抽出する。

  「二値パターン」(太さの情報を持つパターン………………………図1 b)

  「細線化パターン」(太さの情報を落としたパターン………………図1 c)

  「折れ線近似パターン」(曲線の情報を落としたパターン…………図1 d)


 このようにパターンを変換するメリットを、二例紹介する。たとえば、線の太さを求め比較する場合、これまでは外接面積に占める線の面積の割合などで比較していた(注
7)。これを、二値パターンの文字部分の点の数を細線化パターンの点の数で割ることによって、画数に関係なく線の平均的太さを測定し、比較することができる。図2に例を載せた。また、長さや角度を測定する際に、同じ折れ線近似の方法を用いれば、誰が行っても同じ点を定めることができ、客観的に測定することができる。本研究では、任意の点を指定することにより、自動的に長さ・角度を抽出するソフトウェアを用いた。これを用いて、「書」という卑丁の複数の横画の角度を測定した例を図3に載せた。


 なお、機構処理による文字認識の場合は、最終的に機械処理することを目的とするが、本研究の場合、数値として抽出した特徴と、人間が主観的に感じる特徴との対応をはかっていかなくてはならない。

 

4、分析例(重心の位置とそれに影響を与える要因について)

 分析例として、中国の楷書書跡を対象とした分析例を紹介する。

 対象書跡として、今回の分析はテスト的なものであることを考え、中国楷書書跡から次の10の書跡を選んだ。なお、文字は伏見沖敬編『書道大事典」等から集字した。

鍾ヨウの書跡(宣示表など)・鄭義下碑・張猛龍砕こ曇目碑・智永千字文・孔子廟掌碑・九成宮醍泉銘・雁塔聖教序・顔氏家廟碑(顔勤祀碑を含む)・張廉卿千字文

 これらの書跡から、対象字種として、扁と旁の複合でないものを中心に、次の二五

字種を選んだ。以上の文字を対象として、分析を行う。

(武我若石為永天金之不乎子年中書門月清以心方無雲也能) の二五字種

分割比の分析においては

(天乎子年中書清) の七字種

 分析の観点として、次の観点を設定した。

  ○重心の位置

  ○重心の位置に影響をあたえる要因

 この重心という観占州を設定した理由は、次のように説明できる。字形の基本的な原理に、均斉・均衡がある。均斉は理解しやすいが、均衡は重量的調和であるとか、重心の位置によって均衡を保つなどと説明されているだけ(注8)で、客観的に分析されたことはなかった。そこで、均衡という問題を解くための第一歩として、「T、文字全体の特徴」のレベルで、「重心のI」という観占…を設定する。そして、重心に影響を与える要因として、レベルIIIの特徴から1例をあげて考察する。重心を数値として表現するために、次の特性値を定義する。なお、ここで定義した重心は、文字部分の点の分布から得た重心であり、視覚的にとらえられる重心と一致するとはかぎらない。今後の課題である。

◎「I、文字全体の特徴」のレベルから

中心を基準として重心の位置をあらわす特性値 (注9

  M10…]軸(横)方向

  M01Y軸(縦)方向

細線化パターン (骨格) の重心をあらわす特性値

  TM10…]軸(横)方向

  TM01Y軸(縦)方向

◎「III、文字の構成要素の特徴」のレベルから

横画の分割比を示す特性値(注10

  x_div…横画全体にしめる、左の部分の比率

 

 重心の測定結果は、次のようになった。対象とした書跡・字種を総合すると、図4のように文字の外接する枠の中心からみて、わずかに右下に位置した。正確には、

  〇中心から右(]軸方向)に1.73

  ○中心から下(Y軸方向) 0.58

となった。ただ、対象とした各書跡の重心の位置の平均を比較すると、かなりの差がみられた。各書跡間の差異、各字種の差異を図5に示した。このグラフの標準偏差の域は、字種による重心の変化の程度を表している。たとえば、鍾緑・智永千字文は横方向の字種間差異が大きく、縦万向に小さい。対象書跡全体でこの二者をみると、他の書跡が碑に刻されることを想定して書かれた文字であるのに対し、この二者はそうではない。(張廉卿千字文は、碑に刻された文字ではないが、上下左右の位置が厳密に書かれていることから、碑に刻された文字と同様に考えた。)碑に刻される文字は、縦列をまっすぐに見せるために一字の横方向の変化を抑えているとすると、この重心の字種間差異は納得できるものである。


 以上のような結果となった重心の位置に、影響を与える要因について考察を行う。

影響を与える要因として、次の二点を仮定してみる。

  ○線の太さの変化

  ○文字の骨格の内、横画の分割比

 まず、文字の骨格のうち、横画の分割比が、重心に影響を与えているか否かについて、分析する。


 図6のように横画に縦画が交わる場合、縦画の位置、すなわち横画の縦画による分割比が、重心の横(]軸)方向の位置を規定する大きな要因となっているという仮説がたてられる。これを示す特性値x_divは、図7のように横画全体にしめる縦画の左側の長さの割合をあらわす。


 分割比の各書跡全体の平均値は、0.53とわずかに左が長い数値となった。 横画が、重心に関係しているか否かをみるために、重心の横(]軸)方向の数値(M10)と分割比(x_div) の簡易的な相関を示したのが図8である。相関関係は0.19と、相関はないといってよい。分割比は、重心に影響をあたえていないのだろうか、という疑問が起きる。

 次に、線の太さの変化が重心の位置にあたえる影響をみる。図9のように、同じ長さの横画があったとしても、右側の太い横画の重心は、当然右側による。

 太さによる重心の変化を取り除いてみるために細線化パターンを用いて、太さの要素を排除した骨格の重心を示す特性値TM10TM01を求めた。結果は]軸(横)方向に顕著で、骨格の重心は太さをもつパターンの重心より、左に位置した。図4において、黒丸で示した点が、その平均的位置である。

 この結果から、骨格の重心は中心に近いところに位置するが、それを太さの変化で右寄りにしている、すなわち、対象とした文字の画すべてを平均すると、左側より右側の方が太くなっていることがわかる。なお、図5の重心の平均と細線化パターンの重心を比較すると、各書跡ごとの差がわかる。

以上を踏まえ、横画の分割比と骨格の重心の関係をみるために、細線化パターンの重心(TM10) と分割比(x_div) の相関を調べる。この相関が、図10である。相関係数0.67と低いものの、相関がありそうなグラフとなった。骨格の重心には、分割比の影響があらわれているといって良さそうである。 二つの相関から、x_divで表現される横画に交差する縦画の位置は、文字の骨格の重心の位置に影響を与えていること、それを太さの変化で相殺していることがわかった。要するに、図11のような傾向があるわけである。 重心の位置を規定する要素をとらえることは、多くの要素を分析して見なければできないが、今回は横画の分割比を代表として選び、分析した例をあげた。

 

5. 将来的展望と課題

 以上の分析例より、コンピューターによる客観的な字形分析の可能性と意義は認めることができるであろう。しかし、本論文で示したのはあくまで分析例であり、実用化のためには、今後多くの特性値を定義し、多くの文字を対象として検証を行うことが課題となる。また、数値として抽出した特徴が、主観的に感じることと一致するものであるかを確認することも必要である。さらに、字形分析の目的が単なる比較であれば、本研究で示した過程がそのまま適応可能であるが、書写書道教育の研究に用いる場合などを考慮すると、字形分析と次にあげられるような他の実験・研究とを組み合わせていかなくてはならない。

 ○筆速、握圧・筆圧の測定・実験や、書字の疲労度の研究

 ○文字の概念の認識速度、読む際の疲労度、の研究

 ○サンプルをあげてのアンケート

 たとえば、分析例で対象とした文字の太さは、文字の右部分より左部分の方が太い傾向がでた。この傾向は、視覚的な美しさを意識した結果であるか、それとも書字過程の手の運動に起因するものであるか、といった疑問がおきる。横画の書字過程を考えると、起筆部より終筆部の方が力が加わりやすいのではないかという考察もできる。このことを実証するためには、字形と筆圧の関係を研究することが必要である。字形についての研究を指導法・学習の理論などに用いていくためには、書宝過程や文字の認識と字形との有機的な関係を、把握していかなければならない。

 最後に、本研究の最も大きな課題は、書写書道教育の研究者・書道の研究者が簡単に字形分析に着手できるようにすることかもしれない。本研究では、処理に大学肘設の汎用コンピューターを用いていることから、その基本知識がないと難しい。しかし、これまで述べてきた課題を消化していくことを考えると、特定の個人が研究を進めていくには限界がある。今後、パーソナルコンピューターとその周辺機器を用いるなどして、簡便なものにしていくとともに、情報工学の研究の成果を柔軟に取り入れていく必要があると考える。

 

お わ り に

本論文は、書道や書写書道教育の分野の字形研究に、はじめてコンピューターによる特徴抽出の方法を試みたものといえるだろう。これまでの主観による字形研究に対し、客観的に字形を分析する可能性を示すことはできたと考える。しかし、目の前の課題は大きく、本研究が第一歩目を踏み出したに過ぎないものであることがわかる。

 

 

*1 久米「書写・書道科教育学の構想」/広島大学教育学附属高校『国語科研究紀要』第14号、1971

*2 久米・竹之内「筆圧・握圧測定による書写指導の研究 1-7/全国大学国語教育学会

*3 国立国語研究所報告『構組の字形に関する研究』/国立国語研究所、1964

*4 佐藤敬之輔『漢字下』/丸善、1976

*5 石席『新書道概論』/日本習字普及協会、1975

  上條『現代の書教育』/木耳社、1980

*6 吉村ミツ「機械処理のための手書き文字の基礎的研究」(1983、名古屋大学)

*7 福宿「済寧碑群の関連系統」/全国大学書道学会、1985

*8 『指導要領解説書』/文部省、1974