学習者中心型の授業展開

子どもたちの文字からスタートする発想

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子どもたちの字からスタートする指導であること
  ←「手本学ぶ」から「手本学ぶ」へ
  ←自分の文字を見直す力の育成

 という点が残っていました。これらについて、うまく説明できるかどうかわかりませんが、お話ししてみることにしますね。


これまでの書写の授業のイメージ

 では、こういった考え方を、授業の中でどのように生かしていけばよいでしょうか。一つの考え方を紹介しておきます。ただし、これも発達段階に応じて使い分ける必要があることを知っておいて下さい。

 これまでおこなわれてきた書写の授業の多くは、次のようなパターンであったと考えます。毛筆を用いた授業をイメージしてみて下さい。

 おおよそ、その日に学習する手本が載っている教科書のページを開きます。そして、手本をよく見るように指示、またどこに着目すべきかといった指示を受けます。そして、手本を見ながら練習をします。途中で先生のところへ持ってくるようにという指示をし、子どもたち書いたものを持っていって朱墨で添削してもらったりします。その後、再度練習をし、授業の終わりあたりには、清書の指示があって、小筆で名前を書き入れ提出する。場合によっては提出した清書を先生が直して再度返してくれることもあるでしょうし、教室に張り出してもらえることもあるでしょう。一概にはいえませんが、このあたりが一般的な書写の授業、毛筆の授業だったのではないでしょうか。



気付く・理解という点からの授業

 次の図を見て下さい。先の授業展開では、手本を優れたものとして絶対的に認め、それに近づくことが目標のようになっていました。
 それに対してこの図では、試しに書いたもの=試書、もしくは日常書いている文字、すなわち一番最初に子どもたち自身の文字から始まります。手本を見ないで、一回自分で書いてみようね、というわけです。そしてその自分の書いた字を元に、自分自身の文字をよりよいものにするためという発想で、手本との比較、友達の文字との比較をおこないます。ここが、学習内容の理解と、子どもたち自身の学習課題の把握の段階となります。
 たとえば、「三」の例で真ん中の横画が長かった人は、それを直すことを自分の課題とするということです。

 その課題を、実際に書く文字で実現する段階が、練習ということになります。その後、課題が実現できているかどうかといった自己評価または相互評価によるフィードバックがあっても良いですね。教師が一人一人の文字を添削するのではなく、子どもたち自身が自分の字を見つめて、良くしたい箇所を見極めることが大切なわけです。もちろん、「添削」では教師の毛筆の技能の高さが求められます。この自己評価・相互評価では、教師が子どもたちに気付かせる力が必要になります。この子どもたちに気付かせる力は、どの教科でも必要とされる力のはずです。

 そして、まとめの段階としては、清書ではなく、日常の文字に生かせるかどうかということをおきました。せっかく学習しても、清書の時だけ使える知識・技能ではなく、普段に生かせることが大切ではないかということです。ただし、毎時間同じようにおこなうのは、難しかったり、どうかとも思いますので、工夫が必要です。

 まだまだ実感としてわかないかも知れませんね。先ほど皆さんには、「三」「書」という字を書いてもらいました。そして、横画の長さについて比較しました。これが、この図における比較、そして学習内容の把握と考えたら少しわかってもらえるでしょうか。

 このように考えてみると、先の図のようなパターンでは、あまりに理解という側面、もう少し詳しくいうと、自分の字を見つめ、より良くするために何を学習すべきかという視点が欠如していたように感じられないでしょうか!




今日の最後に、是非お願い

 授業時間も終わりに近づいてきました。いくつかお願いしたいことがあります。

 まず、第一点目の注意として次のことを補足しておきます。お話しした考え方は、すべての学年でいつも同じようにおこなうべきだと考える必要はありません
 たとえば、小学校1年生で字を書き始める段階においては、ドリル的な学習ですとか、点線をなぞるなど理論ではなくひたすら覚える段階が必要なはずです。また、私個人としては、書き初めとして、毛筆でその年の目標を書いてみるなどの学習もあって良いと思います。もちろん、学習した内容を日常生活に生かすような方策がなければ、せっかく学習した内容も生きません。

 なお、これらすべてについて、この時間内にお話しすることはできません。  

テキスト10ページ以降に、「指導計画と指導方法」について詳しく書かれています。必ず、ここを読んでおいて下さい。

 22ページ以降には、授業作りの実際として、導入・展開・練習などそれぞれの段階における工夫から指導案の例まで載っています。特に、教育実習の際などには、これらのページを参照して見てください。。