佐々木『からだ:認識の原点』と文字を書くこと



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 佐々木氏のこの本は1987に出版されており、現時点で特別新しいものではない。また、もちろんのことながら、この本の表題からもわかるとおり、認知科学の研究と「からだ」とを切り離して研究することの問題点と、結びつけた研究の可能性とを読むべき本である。「むかうアクション」「なぞるアクション」という視点のおもしろさを、読むべき本である。

 一方で、この本は「手で文字を書くこと」を研究しているものにとって、示唆に富むものであることも、知られた事実である。以下は、どのような点が手書き文字を研究するものにとって有効であるか、筆者なりに抜き出したものである。手書き文字研究者がこれらの知見を生かしていくことは、また認知科学の領域についてあらたな実験結果を加えるものであるかも知れない。


急速反復書字時の書字スリップ p.1

タキストスコープを使用した実験の可能性 p.7

なぞりアクションと認識に要する時間 p.31

「層理論」と意識化の感覚の可能性 p.38

メンタル・ローテーション p.55

空書とその認知的機能 p.94

漢字の複雑さの評定値 p.95

運動覚性促通(motoric-facilitation)p.97