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ひらがなの字形について、質問をいただきました。
具体的には、「さ」「き」は明朝体などでは、はねでなくつながっているわけですが、書写のときは一度はねてから書くようになっている、、この差についてのご質問です。
やりとりの形のまま、(プライバシー情報等の削除と若干の整理はしてありますが)、掲示させてもらいます。
> 「さ」「き」は書写のときは一度はねてから書くので3画と4画ですね > それに、教科書であれば、1年生の算数タイトル「さんすう」も > はねてありますし、国語でも字の練習のときは離れている活字が > 使われています。 はい。教科書の場合、離れていることが多いと思います。 > でも、一般の活字はつながっています。また、教科書の中にも、つながって > いる字形を使っている場合もあるようです。 はい。多くの一般印刷用フォントではつながっていると思います。 > まず、なぜこんな差があるのか、知りたいと思います。 小学校の教科書に用いられている字について、おおざっぱにいいますと、 漢字の場合 ・小学校で学習する<字体>および教科書で使用される<字体>は、 小学校学習指導要領の学年別漢字配当表によっています。 ・小学校で学習する<字形>および教科書で使用される<字形>は、 現在法的根拠はありませんが、同 学年別漢字配当表に示されているものに 準拠している場合が多いです。ただし、これに該当しないゴシック体なども 教科書に用いられるようになってきました。 ・社会的には、常用漢字表において字体が示され、 またその「字体についての解説」においていわゆる許容が認められ ています。小学校で示される字体・字形は、手で書く行為に適した ものを示すと共に、混乱をまねかないようにある程度の統一がなされ ていると、一般に理解されています。 ひらがなの場合 ・字体についても字形についても、漢字の場合のような規準を文部省は 示していないという問題があります。 ・教科書で教科書体として用いられ、手書き学習用に用いられる字形は、 ある程度安定しています。たとえば「さ」「き」の場合、はねであり、 連続をしていないものとなっています。(厳密に確認したわけでは ありませんが、おそらく間違いないと思います。)この理由は、 漢字同様に、学習段階において混乱をまねかないようにするためだと 考えられます。 > 教科書などでも、「かきましょう」などは繋がった「き」を使っている > ことがあるのですけど、、 漢字の場合も字形に法的根拠はないわけですが、ひらがなについては<字体><字形> ともに、規準が示されていません。また、漢字の場合も、教科書の印刷にあたって 教科書体以外のゴシック体などを用いても良いことになっています。 許容や、字形のゆれの意味がわかる大人(もしくは、それがわかる発達段階 の子ども)と違って、その理解が難しい子どもたちにとって、いろいろな形が あって混乱してしまわないようにするためには、統一された形にしておく方が 望ましいと思います。 > で、結局のところ、これはどう指導したら良いのでしょう ここから先は、私の個人的な見解として理解してください。 上記のような意図を理解している小学校の先生であれば、「さ」「き」 はつながらない形で、指導および板書されるだろうと思います。 以上から、許容や、字形のゆれの意味の理解が難しい年齢の子どもさんに は、つながらない形で指導しておくべきかと思うのです。 ちなみに、なぜ<つながらない形>に統一されているかについては、 明記されている文献が思い出せません。 私の推測・仮説としては、次の通りです。 つながる部分の書字方向は、左上方向になります。漢字にしても、ひらがなに しても左上に書字するストロークは、はねなどごく一部に限られます。 毛筆を立てた状態で用いた場合は、左上に線を引くこともそう難しく ありませんが、硬筆で通常の傾けた状態で左上に線を引くことは 難しく思います。(特にシャープペンシルなどだと、ひっかかることも ありそうです。) ですから、書字ということを意図しない印刷用字形の場合は、装飾性などを 重視した形状で良いわけですが、書字を意識した場合、書きやすさを意図した 形状が望ましいと(意識的か無意識にかはわかりませんが)されたのでは ないかと推測します。