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  (おわび)毎日新聞「書写の授業時間激減」記事コメントの訂正 Date: 2004-10-04 (Mon) 
 毎日新聞2004.10.04の社会面に、「公立中学校:書写を軽視、指導要領の時間以下に 青森県」という記事が掲載されました。私のコメントが付いています。
http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/edu/news/20041004k0000m040117000c.html

 この記事に関するコメントは、電話取材により30分以上お話しさせていただいた内容を、記者の方が要約して下さったものです。要約のため、意図が伝わらない部分や誤解を招く部分がありますので、ここに訂正・補足させていただきます。

 また、私のコメントとして掲載された文章により、ご迷惑をおかけしたこともあろうと思います。関係各位に心よりお詫び申し上げます。十分な確認をおこたったことに対する責任を、痛感しております。


○「正しい文字を速く書く学習は中学校の書写にしかない。」について

 この記事自体が、学習指導要領に定める時間数と実態との問題を扱っていますので、その学習指導要領に沿ってコメントしました。本稿は電話での話を思い出しつつ、その視点で記します。
 現在の学習指導要領から、国語科書写の目的を簡単に書き表すならば、
   ・正しく
   ・整った 文字を、
     ・目的や必要に応じて(調和良く)、
        ・読みやすく
        ・速く
            書くこと
となると思います。「正しく」「整う」「読みやすく」は、小学校でも扱う内容です。書写は、発達段階に応じて質的向上をねらった学習が必要だと思いますから、小学校でやったら中学校ではやらなくて良いということにはなりませんが、それでもこの3要素は小学校段階でやっています。
 一方、このうちの「速く」「目的や必要に応じて…」という点は、学習指導要領では中学校のみで示されますので、中学校段階での学習の状況によっては十分な能力を身につけることができない危険性もあり得ます。
 以上のような意図が、冒頭の文にはあります。主として「速く」という要素が重要なわけです。仮に一文であらわすとすれば、「必要や目的に応じて(調和良く)、(読みやすい文字を)速く書くという目標は、中学校書写でしか規定されていない。」となります。それでも意図は伝わりにくいかも知れませんが。

○「試験で速く字を書いたりするのに影響する。」について

 先の文では、「目的や必要に応じて…」という要素が抜けています。文字を書く際には、きちんとした字を書きたいときもあれば、極端にいえば自分だけがギリギリ読めればよい字を速く書きたいこともあるはずです。もちろん、その中間もあるわけで、たとえば高校入試の際などは、そこそこ読みやすい字(=解答として読み間違えられる心配がないように)を、速く書く必要があります。速く書けることは、思考時間に余裕を持たせることにもつながるからです。
 中学校学習指導要領では、「速く」書くことが目標となっており、さらに「目的や必要に応じて…」(この部分には押木の解釈が入っています)書くためには、その基礎的能力が必要になるわけです。この文は、いくつかの例の中から、記者の方がとりあげて下さった文なのです。

○「いかにパソコンが普及しようと字を書くことはなくならず、」について

 私自身、遠い未来において「字を書くことはなくならず」かどうか、わかりません。この趣旨は以下の通りです。現時点において、社会ではこれだけ情報機器が普及しても、(日本に限らず)学校教育では手で書く行為が間違いなくおこなわれています。おそらく学習という点が重要なのだと思いますが、そのことは別稿で書かせていただくとしても、現実として学校では手で書くことがおこなわれているのです。
 そのことを、単純に述べたに過ぎません。

○「子供の学ぶ権利を侵す行為だ。」

 大胆に断言する文章になっていますが、これは、きちんと訂正させて下さい。

 (解釈が難しいのですが)、学校教育は、学習指導要領に沿って、学校や地域そして子どもたちの実態に即しておこなわれます。単に学習指導要領だけに頼っては、目の前の子どもたちをないがしろにしかねません。一方、教師が自分の大事に思うことだけを教えるわけにはいきません。
 後者の意味で、学習指導要領があることで、子どもたちは一定の学習をする権利が保障されているというとらえ方も可能です。
 一方、前者の意味では、仮に授業時間数が少なめであったとしても、学習指導要領に示された学力が十分に達成されていれば、子どもたちの能力として問題はないとも考えられます。その意味では、今回の該当箇所は「〜程度」と指示されていますし、十分な能力が達成されていれば、個人的見解としてはあり得ることかも知れないと思います。
 このような考え方の上で、
   学習指導要領に即していえば、「もし仮に、定められた時間
  (学習に必要な時間)を確保しなかったという理由で、学習指
   導要領に定められた目標が達成されていないとすれば、それは
   子どもたちの学ぶ権利を侵していることにもつながるのでは
   ないか。」と私は思う。
が、本来の趣旨になります。

 以上がおおよそ本来の趣旨になります。

 子どもたちが文字を書くことの能力を高め、文字を書くことの文化等について興味と関心をもってくれるよう、私自身も努力していきたいと思います。

 ご迷惑をおかけした諸方面の皆様に再度お詫び申し上げます。